総括班 研究活動報告<2000年度>
研究会・シンポジウム報告
2001年2月25日 総括班公開講演会「現代イスラーム社会の変容」
公開講演会「現代イスラーム社会の変容―いま民衆は、なにを求めているか−」報告
日時:2001年2月25日(日) 13:30〜17:00
場所:仙台国際交流センター(白檀1)
共催:東北大学・学際科学研究センター「現代イスラーム社会の総合研究プロジェクト」
後援:仙台市
演題:小林寧子(南山大学助教授)「インドネシア民主化の行方」
立山良司(防衛大学校教授)「イスラエル首相選挙と中東和平プロセス」
司会:私市正年(上智大学アジア文化研究所教授)
概要:
小林氏の講演は、世界で最大のムスリム人口をかかえるインドネシアにおける現代イスラームの動態をわかりやすく解説したものであった。インドネシアのイスラームは、中東などの外のイスラーム世界と強い絆をもちながら、豊かな地域的な独自性を備えているが、60年代以降、再イスラーム化あるいは草の根のイスラーム化ともいうべき現象が深く進行し、それが現代のインドネシア政治にも大きな影響を及ぼしていることが、多くのスライドを交えながら説明された。とりわけナフダトゥル・ウラマーの指導的なキヤイ(宗教教師)から大統領職に就任したアブドゥルラフマン・ワヒドの人と思想、そして政治手法の解説は興味深く、現代インドネシアの直面する課題についても基本的な理解が得られたと思う。
立山氏の報告は、去る2001年2月6日のイスラエル首相選挙の分析からはじまり、シャロン首相は必ずしもイスラエル国民の支持を得ているわけではなく、むしろ連立工作の困難に直面していることが説明され、ついで今回の選挙がアメリカのブッシュ新政権の中東政策と関連しつつ、今後の和平プロセスにどのような影響を与えるかについて解説と展望がなされた。シャロン首相の和平構想は、基本的には現状維持であって、パレスチナ側に譲歩をする可能性はなく、一部にはもはや「オスロ合意は死んだ」という議論もあるが、長期的に見れば、オスロ合意にそった和平プロセスは維持されるだろうという展望が示された。
参加者は全部で40名ほどであったが、聴衆は熱心に耳を傾け、講演後には的確な質問が寄せられた。日本と日本人にとってイスラーム世界の重要性がますます高まるなか、今後ともこのような大学・研究機関と社会とを結ぶ機会を作ることの必要性を改めて認識させる公開講演会であった。
(文責:小松久男)
会場の様子(画像をクリックするとアルバムが見られます)
仙台国際交流センター 小林氏 立山氏 参加者の様子