第1回公開講演会「ルクソール事件を考える」



 さる2月21日(土)、東京大学文学部において、上記講演会を開催した。初めての試みであったが、開始時刻には、会場の2番大教室に100名を越える参加者が集まった。

 

1)概要 佐藤研究代表から趣旨説明のあと、下記の講演が行われた。

 小杉さんは、レバノンの相談所での人生相談風景や常套句である「インシャラー」(「もし神が望み給うならば」)の含意など、身近な事例をあげながら、神の存在を前提にしているイスラーム世界の「目に見えない世界=価値観」を見きわめていく必要を語りかけた。また、イスラーム復興運動の社会的・歴史的背景を解説しながら、イスラーム原理主義という用語法の誤り(イスラームの原理を実践しようとする人々という意味で特定の集団をさすのなら、それ以外のムスリムやイスラームは原理的でないことになる)や、イスラームは政教一元論をとっており、よく言われる「イスラーム=政教一致」という批判はキリスト教世界の政教二元論から来ていることなどの問題点を指摘した。漫談をまじえた巧みな語りで、会場は大いに湧いた。

 

 平山さんは、おりしもイラクの武器査察問題が浮上するなか、NHKセンターから駆けつけてくださった。30年以上、中東の報道の現場にいた経験から、ムスリム同胞団の医療活動やレバノンのヒズボッラーのビデオ取材など、生の声を再現しながらの講演であった。エジプト、パレスティナ、レバノンなどのいわゆる政治テロをとりあげ、それぞれの国の政治・社会情勢や国際関係から起こってくる問題であり、イスラームという宗教が直接に銃や爆弾を抱えさせているのではないこと、レバノンのヒズボッラーが、最近は観光客誘致政策にも転じているなど、状況に応じた中東の人々の行動様式を見ていく必要を説いた。

 

 講演後、質疑応答に入ったが、的確な質問と明快な講演者の回答の応酬に、最後まで緊張が続いた。

 

2)アンケート集計結果
 参加者に、名前、所属、講演会についてなど、簡単なアンケートを行った。
 所属では、学生・大学院生70%、職業人27%で、学校別では、東京外語大13、東京大学11、慶応義塾大学7など18校にわたり、広い範囲から参加者が見られた。一見して女性の参加者が目立ったが、アンケートでも47%を占めた。なお参加者には、エジプトからの留学生もいた。
 どこで講演会を知ったかという質問では、友人・先生44%、ポスター30%、新聞13%が上位をしめ、Eメールとホームページは極少数で、口コミやポスターというトラディショナルな方法がなおインパクトがあることを示している。
 最後になりましたが、会場準備・ポスター掲示・勧誘など開催にご協力頂いた方々に改めて御礼を申し上げます。

(文責・総括班 三浦 徹)