中央アジア研究セミナー報告

 


中央アジア研究セミナー報告


このセミナーは3月7日(土)に東京大学山上会館において、総括班・3班・民博地域研究企画交流センターの共催によって、海外からの二名の研究者による英語の報告に基づいて行われました。

 Dr.Timur Kocaoglu(コチ大学教養学部助教授)氏には"Recent Studies on Modern Central Asia in Turkey, 1969-1997"というタイトルで報告していただきまた。この報告で、同氏は、トルコ共和国における中央アジア研究がどのように行われてきたかについて、KopruluやToganなどの研究者からはじまる具体的な例を挙げながら説明されました。トルコ共和国における近年の中央アジア研究は、バスマチ運動やジャディード文学、テュルク系叙事詩などの分野の研究が盛んであるとの報告がされました。またトルコ共和国での中央アジア研究は、日本やフランス、アメリカなどの国々と比べて遅れており、中央アジア諸国との交流も政府や公的機関よりも民間の機関の方が積極的であるとの指摘がなされました。

 休憩に続いてDr.Stephane Dudoignon(フランス外務省嘱託研究員)氏の発表が行われました。同氏には"Geographical and Social Origin, Political Course and Strategy of 20th Century Central Asian Intelligentsia: The Case of Tajikistan"という題目で報告をしていただきました。報告では、混迷が続くタジキスタンについて、ソビエト時代にまで遡る、その地域的、政治・経済的特性についての分析に基づいた見解が示されました。タジキスタン北部のフジャンドや南のクリャブ、山岳地帯のバダフシャンなど、諸地域の例が具体的に挙げられ、それぞれの地域的特徴や権力構造について解説がなされました。

 いずれの報告においても報告後に質疑応答の時間が設けられ、様々な質問にたいして有益な解答が得られるとともに、活発な議論が行われました。日本の研究者や学生、外交官などのほかに、地域研で招聘されたウズベキスタやカザフスタンからの研究者も参加し、たいへん密度の濃いセミナーとなりました。

 また、研究会の後に行われた懇親会においては互いの交流を深めるとともに、さらに研究報告に関しての議論が続けられました。若い学生にとっても外国の研究者と話をするよい機会になったと思います。

なお、当日発表された報告は後日ペーパーの形で発表される予定ですので、報告内容の詳細に関してご関心のある方はそちらを参照していただきたく存じます。


「中央アジアの人口移動:その歴史と現在」報告