The Dynamism of Muslim Societies
-Toward New Horizons Islamic Area Studies-

 イスラーム地域研究プロジェクトは、10月5日から8日の4日間にわたり、木更津市のかずさアークで国際シンポジウムThe Dynamism of Muslim Societies: Toward New Horizons in Islamic Area Studiesを開催した。その目的は、平成9年に発足した文部省科学研究費(創成的基礎研究費)による「現代イスラーム世界の動態的研究」(通称「イスラーム地域研究」)の最終年度にあたり、過去5年間の研究成果をとりまとめ、これを内外に発表するとともに今後の研究課題を提示することにあった。

 会議は、二つの公開講演に続き、イスラームと世俗主義、ジェンダーと社会空間、海港と商人・文化接触、民衆の中の神秘主義者と聖者、社会的抵抗と国民形成、イスラーム法廷文書の史的研究、地理情報システムによるイスラーム地域研究など7つのテーマ別セッションと総括セッションからなり、各セッションにおいて密度の高い報告と活発な討論が行われた。

 会議は、9月11日の米国における同時多発テロとアフガニスタン情勢の激化という事態の中で開催され、じっさい数名の招聘研究者は参加をとりやめざるをえなかった。さらに会期中の8日未明には米英軍によるアフガニスタン空爆も始まった。しかし、最終的にはモロッコ、エジプト、トルコ、ウズベキスタン、タジキスタン、インド、カナダ、アメリカ合衆国、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、ロシアの13カ国から25名の外国人報告者を迎え、国内参加者を合わせると、公開講演会には約300名、並行して開かれたセッションにも合計300名ほどの参加者を得ることができた。

総括セッションでは、参加者の積極的な参加を得て談論風発となり、学術行政のあり方から、戦時におけるイスラーム地域研究者の道義に至るまで幅広い議論が交わされた。一方、国内から若手の研究者や大学院生が多数参加したことは、海外の研究者からも高い評価をえた。

 「イスラーム地域研究」プロジェクトは、21世紀の世界におけるイスラーム地域の重要性がますます強く認識される中で、発足以来先端的な研究を展開し、いくつもの国際研究セミナーの開催や英語による研究成果の発表と公刊によって国際的にも高い評価を得てきたが、それは今回の国際シンポジウムでも十分に確認されたと思う。こうした意味で、本会議の学術的な意義はきわめて大きなものがあったといえるだろう。各セッションで読まれた報告は、近い将来英文の論文集として公刊されることになっており、これもまた楽しみな成果である。

 最後に、このシンポジウムを成功に導かれた報告者をはじめとするすべての参加者の方々、シンポジウムの準備と運営にあたって的確かつ迅速に作業を進めてくださった事務スタッフの皆さん、そして、開催にあたってご支援とご協力をいただいた文部科学省、国際交流基金、国立民族学博物館・地域研究企画交流センター、日本貿易振興会・アジア経済研究所、東京大学文学部、山川出版社、千葉コンベンションビューローの関係者の皆様に心からの感謝を申し上げたい。


実行委員長 小松久男(東京大学)

*日本中東学会ニューズレター第87号 (WWWバージョン) より一部加筆の上転載

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国際シンポジウム報告

小松久男
実行委員長 東京大学)