総括班ホームページへ戻る

京都会議報告トップページに戻る

 

「国際会議を終えて」

 関係各位のご協力によって、第1回国際会議「Beyond the Border」を無事終えることができた。この場を借りて厚く御礼申し上げたい。

 今回の会議の責任者として、私がぜひ実現したかったのは、次の2点である。

 著名な外国人研究者を招待してその「講演」を拝聴するのではなく、外国人研究者と対等に議論し、彼らに日本人研究者の研究能力と実績をアピールすること、また、日本が開催する国際会議としての特色を打ち出すことである。

 この目標を達成するために、会議のテーマ選びにはずいぶん気を遣った。日本人研究者がある程度議論をリードできるようなテーマを選びたかったからである。1998年3月に開いた実行委員会での白熱した議論は、いまでも脳裏にはっきりと焼き付いている。数時間に及ぶ議論の結果決定した3つのセッションのテーマは、いずれも魅力的で、かつ重要なものだ、と自負している。イェルサレムのセッションを加えたことで、日本で開催する会議としての特色も出せたと思う。

 外国人研究者については、真剣に、かつ積極的に議論する気のある人に参加してもらうため、招待を出来るだけ避け、ペーパーを公募した。初めての試みなので、大丈夫かという気持ちもあったが、逆に、テーマさえしっかりしていれば、絶対人は集まる、という確信も一方ではあった。幸い結果は吉と出た。航空運賃は自己負担でも、議論のために日本まで来る、というやる気のある優秀な研究者に集まってもらうことが出来たからである。最後の段階で、何人かの方には、旅費の援助をすることが出来たが、それでも最終的に滞在費6万円だけしかお渡ししなかった方がかなりの数いた。これは裏返せば、それだけの価値がある会議を開かなければ、自費参加者を裏切ることになる。万全を尽くしたつもりではあったが、会議の前には、本当にこれで大丈夫だろうか、と一抹の不安を感じたことも事実である。

 しかし、そのような心配も実際に会議が始まると、どこかに消えてしまった。総じてペーパーの質はよかったし、議論も活発だった。特に若い日本人研究者の的をついた質問や、当意即妙のうけ答えには、正直言って感心した。私が話すことが出来た外国人参加者は皆、好意的な意見を述べてくれた。とりわけ歓迎レセプションの席でのアイケルマン氏のスピーチは本当にうれしかった。彼が10年前の「イスラームの都市性」国際会議と比べて、今回の会議がいかに進歩したかを力説してくれたからである。

 もちろん、会議がすべてめでたし、めでたしだったわけではない。ペーパーを公募したために、発表者の地域的バランスをとることが出来なかった点は大きな反省点である。日本人で積極的に発表すると手を上げた人が少なかった点もその理由を考えてみる必要があろう。また、外国人に自費参加者が多かったため、途中で参加を取りやめる人がいたり、最後の段階まで参加確認が取れない人がいて、会計処理に苦労した点も問題だった。文部省予算の使用制限が厳しく、滞在費だけを出すということが難しかったため、事務方には書類つくりでずいぶん苦労させてしまった。3日間ぶっ通しで、さまざまなテーマについての発表を聞くことは、かなり体力的にきつかった、という意見も聞いた。

 このようないくつかの問題があったとはいえ、最後までそれほど大きなトラブルもなく会議を終えることが出来たのは、ひとえに発表者、参加者のご協力のおかげである。また、実行委員と事務関係者の皆さんの献身的な努力がなければ、会議そのものを開催することはできなかったろう。会議のプロである京都国際会議場のスタッフのご協力も忘れることが出来ない。今回の会議の反省点を次回に生かして、2年後にはよりすばらしい会議が開かれるように期待している。


羽田 正(実行委員長)

 

京都会議報告トップページに戻る

総括班ホームページに戻る