イスラーム地域研究(IAS) 6班 イスラーム関係史料の収集と研究
アラビア語写本史料研究会

研究会報告

IAS6班アラビア語写本史料研究会

シンポジウム「イスラーム世界の書記と書記術」

(九州史学会イスラム文明学部会と共催)

実施日時: 2001年12月9日(日)13時30分〜17時
実施場所: 九州大学箱崎文系キャンパス(福岡市)

<発表者および題目>

  谷口 淳一 (京都女子大学文学部)
    「書記の手引書としての『カリフ宮廷の儀礼』」
  渡部 良子 (東京大学大学院人文社会系研究科・博士後期課程)
    「ペルシア語書記術の成立──13世紀まで──」
  清水 和裕 (神戸大学文学部)
    「『カリフ宮廷の儀礼』と祖父アブー・イスハーク・アッサービー」
  莵原 卓 (東海大学文学部)
    「ファーティマ朝時代の書記の分類と職掌」

<概要>

[シンポジウム「イスラーム世界の書記と書記術」に参加して ]
 シンポジウムのテーマとして、「書記」に焦点をあてた要因であるヒラール・アッサービーの『カリフ宮廷の儀礼』講読に、幾度が出席したところ、本シンポジウムの司会という重責を担うことになった。
 谷口氏はまずシンポジウムの趣旨を述べられ、イスラーム世界における「書記」という役割について概説して導入部とされ、邦訳作成中の『カリフ宮廷の儀礼』について、筆者のヒラール・アッサービーとその著書、また同書の書記手引書としての意義を述べられた。
 続いて渡部氏が、ペルシアにおける書記について、「ペルシア語書記術の成立」というタイトルで広汎な資料をあげられ、例えば書簡の形式など具体的かつ詳細なペルシアの書記術について述べられ、アラビア語手引書との比較なども興味深い研究発表となった。
 休憩後に、清水氏による「『カリフ宮廷の儀礼』と祖父アブー・イスハーク・アッサービー」というタイトルの発表があり、テーマとなった同著の著者の祖父について述べられたあと、文書形式と呼称をカリフから臣下へ、また臣下からカリフへなど具体例を述べられ、見のがしがちなラカブやクンヤといったもののもつ意味を提示され、ひじょうに興味深いものとなった。
 最後に莵原氏は「ファーティマ朝時代の書記の分類と職掌」というタイトルで、当該時代の書記の職掌についての詳細なデータをあげられ、また、タウキーという言葉について、命令であるのかサインであるのか、具体例などからも検討をされた。
 シンポジウムはイスラム文明学部会の午後の部を4名で発表するという時間的制約がかなりあり、添付されていたくわしい資料などを十分に活用することができないことがあった。また「カリフ宮廷の儀礼」というテキストのタイトルから、「書記」そのもののイメージがこの時間だけではなかなか絞り込めず、質疑応答も短縮せざるをえなかった。あるいはまた機会があるならば、同様のテーマで、時間的に十分な議論ができればとおもう。それだけに各氏の資料等は、ひじょうに価値のあるものだったとの感を得た。(報告者:森高久美子[大阪外国語大学])


担当:谷口淳一
E-mail: taniguti@kyoto-wu.ac.jp
2002.2.1 作成