日時:2001年1月31日(水)13:00-17:30
 会場:京都外国語大学(京都市右京区 西院 笠目町6 阪急線西院下車)
 共催:上智大学アジア文化研究所、イスラーム地域研究2C、イスラーム世界研究懇話会


 研究発表:
 1.森本一夫(東京大学東洋文化研究所)
"Toward a New Phase of Sayyido-Sharifology: Review and Perspective"
 2.Abdelahad SEBTI(ムハンマド5世大学)
"Sarifism and Sharifism in Morocco: Different Approaches"
(タイトル、および発表順番について、予告から変更がありました)

 コメンテータ
 1.Muhammad Sabri(日本学術振興会外国人特別研究員、ヘルワーン大学)
 2.私市正年(上智大学)

 森本氏の発表は、今日まで充分には注目されてこなかったサイイド・シャリーフ研究の現状をふまえた上で、その研究がもたらすであろう多くの可能性を、研究交流の願いを込めて訴え、かつその道筋を示す意欲的な発表であった。サイイド・シャリーフの事実的な系譜の研究が重要である一方で、従来これに比してサイイド・シャリーフという概念と、これに対する民衆の関わり方に着目する研究が不充分であること、両者をともに研究しその総合の上に、新たな研究の地平を開くべきことがとくに強調された。
 同氏の発表では、1998年ローマで開催された国際シンポジウム「ムスリムの歴史と文明におけるサイイド・シャリーフの役割」が、サイイド・シャリーフ研究へのひとつの契機となり、これを継承する新たな試みの必要が力説されたが、この国際会議はまた、森本氏とセブティ氏の邂逅の場でもあり、本研究会にいたる道の出発点ともなった。
 セブティ氏は、モロッコにおけるシャリーフ研究の動向紹介から論を起こし、部族的組織に関する分節理論や聖者に関する理論、モロッコ王権の形成に関する理論に対する批判を交えつつ、歴史学者と社会学者の共同によるアプローチが有効な成果を上げうる可能性を示唆するものであった。
 これらに対して、コメンテータからは森本・セブティ両氏が専門とする地域でのサイイド・シャリーフに関する諸種の質問から始まって、「歴史」概念そのものに関わる重要な質問にいたるまで様々な問いが投げかけられた。とくに、イスラーム世界における人間移動の問題を重ね合わせて考えたときの、サイイド・シャリーフの持つ意味合いについては、会場からも多くの意見が出され、議論がわいた。
 25名近くの参加者を得て行われた本研究会によって、グループ2Cはサイイド・シャリーフ研究が未だ緒についたところとはいえ、本グループの研究にとって非常に重要な主題であると認め、今後とも追求すべき第4の主題たりえるとの認識に達した。
[報告者:赤堀雅幸(上智大学)]