アメリカにおけるスーフィズム研究動向調査

(報告者:東長 靖)

 研究動向をテーマとする本グループの研究活動の一環として、10月23日より11月5日までの約2週間、サンフランシスコを中心に、アメリカにおけるスーフィズム研究動向の調査を行った。日本やヨーロッパ、イスラーム世界(現地)との研究動向の差違に注目しながら、次代を担う中堅・若手の研究者を中心に意見交換を行った。その概要を以下に報告する。

  1. アメリカにはムスリム団体が非常に数多く存在し、翻訳・出版活動などをさかんに行っている。原典からの翻訳は、専門的なトレーニングを積んだ研究者がしていると日本では思いがちだが、このような団体に属するアマチュアによる翻訳も多い。また、これらアマチュアの団体と研究者が交わる場も存在している点は、日本との違いが顕著である。
  2. 近年ヨーロッパでは、ポポヴィッチなどが精力的に研究者を組織し、スーフィズムの多面的な研究書を企画しているが、このような方向性はアメリカの学界には希薄と見受けられた。個々人が個々の研究を進める傾向がむしろ強いようである。
  3. しかしながら、個々の研究者は専門領域を越境して研究を行うことがむしろ一般的である。たとえば、形而上学である神秘主義哲学研究も、近年、歴史学とのクロスオーバーの傾向が顕著とのことであった。