トルコ、アゼルバイジャン出張報告

(報告者:宮岡 孝尚)

 9月2日から10月2日までのおよそ1カ月間、トルコ共和国(9/2-9/16, 9/25-10/1)とアゼルバイジャン共和国(9/17-9/25)を訪問したので、ここに報告する。

アゼルバイジャン編

   研究環境は、予算が豊富であったソ連時代に比べ頗る劣悪である。何らかのスポンサーがいなければ、出版は不可能である。生活の困難さという点において、研究者も例外ではない。
 同国では、バクー国立大学で考古学及び古代史の教鞭をとるイスマイルザーデ教授(Prof.Dr.Gudrat S. Ismailzade)の案内のもと幾つかの研究機関を訪問して、当プロジェクトの説明をした。インターネットは言うまでもなく、コンピュータ自体が普及していない。アゼルバイジャン科学アカデミーでは、アフンドフ教授(Prof.Dr.Agamusa Axundov)から「言語や文学の研究班が無いのでは」とのご指摘を受けた。
 また、バクー・アジア大学には、日本語コースがあり、日本留学経験のあるジャリロフ博士(Dr.Oqtay Babaalioglu Jalilov, 尚、同氏は、10/22-28 に青山学院大学の招待で来日予定とのこと)の下、生徒6名が在籍しており、ロシア語で書かれた日本語教科書が用いられている。また、ウェスト大学には、アゼルバイジャン語コースもある。母国語を完全にマスターしていない人が多いためとのことであった。
 バクーの町はトルコ化傾向が強く、その中心街では、トルコの企業が次々に近代的ビルを建設し、1993年ごろになってトルコから入ったといわれるドョネルケバブの店が目立つ。また、トルコ・ディヤネット・ワクフ(Turkiye Diyanet Vakfi)の活動は注目に値する。同ワクフは、モスクの建設の他、トルコ・アナドル高校(Turk Anadolu Lisesi)への支援などの教育活動にも力を入れている。
 ゲンジェ(Gence)では、ヘイダル・アリエフ大学にて、当プロジェクトの紹介をした同地は、近年反乱を起こしたヒュセイノフ元首相の根拠地であったためか、政府主導の開発から取り残された観がある。また、郊外には、ナゴルノ・カラバフからの難民が居住しており、治安は良好とは言えない。近郊の町ハンラル(Hanlar)にある元ドイツ人集落(1941年、スターリンにより強制移住・追放)を見学した。同地のドイツ人入植者に関する研究書として、Hazim Allahverdioglu Ibrahimov, Azerbaijan Tarihinin Alman Sehifeleri, Baku, 1997. がある。
 また、アゼルバイジャン航空の機内誌に、アゼルバイジャンCD-ROM(ドイツで製造されている)の宣伝があったので紹介しておく。http://members.aol.com/engelohg/aserb/demo/welcome.html
 さらに、アゼルバイジャンを紹介するページとしては、「アゼルバイジャンにようこそ」(アメリカで作成されている)がある。http://www.brittany-net.com/azerbaijan.html

トルコ編

 トルコでは、ご存じの通りインターネットもかなり普及している。そこで、教育機関の中でも最先端を走ってると思われるビルケント大学(Bilkent Unversitesi, Ankara)のコンピューターセンターを訪問した。当研究会のロゴについて、「(トルコでは)ファンダメンタリストと誤解されるのでは?」とのご意見を頂戴した(ビルケントのホームページ)。
その他のトルコの主要大学のホームページは以下の通り(50音順)
アドナン・メンデレス大学
アナドル大学
アバント・イゼット男子大学
アンカラ大学
イェディテペ大学
イスタンブル工科大学
ウルダー大学
エーゲ大学
エルジェス大学
オスマン・ガーズィ大学
ガーズィ大学
ガーズィアンテプ大学
空軍士官学校
9月9日大学
5月19日大学
コチ大学
東地中海大学
サカリヤ大学
ジュムフリイェット大学
セルチュク大学
ゾングルダグ石炭大学
中東工科大学
チュクロヴァ大学
ハジェテペ大学
バルケシル大学
ファーティフ大学
ボアズィチ大学
マルマラ大学
陸軍士官学校
付録:トルコの新聞
アクシャム
イェニアスル
エメキ
サバーフ
ザマン
デュンヤ
ヒュッリイェト
ファナティーク
ミッリイェト
レスミ・ガゼテ,
ターキッシュ・デイリー・ニュース
メルスィナ
 トルコ科学技術研究協会(Turkiye Bilimsel ve Teknik Arastirma Kurumu: TUBITAK)では、ジェミル・コチャク出版局長(Doc. Dr. Cemil Kocak)と面談した。同氏の最近の著作としては以下のものが挙げられる。
『トルコ・ドイツ関係史』Turk-Alman Iliskileri(1923-1939), TTK, Ankara, 1991.
『ミッリー・シェフ時代』Milli Sef Donemi(1938-1945), 2 vols, Iletisim Yayinlari, Istanbul, 1996. (1989年の第一版の増補改訂版)同書は、アタテュルク期から民主党政権、単独政党制時代から多党制時代への移行期として重要なイスメト・イニョニュ大統領時代の政治及び外交を中心に研究した大著(TUBITAKのホームページ)。
 中東・バルカン研究ワクフ(Ortadogu ve Balkan Incelemeleri Vakfi)では、イスマイル・ソイサル元大使(Em. Buyukelcisi Ismail Soysal)と面談した。同氏の最近の著作としては以下のものが挙げられる。
『トルコ対外政策研究案内』Turkiye'nin Dis Politikasi Incelemeleri icin Kilavuz, Eren, Istanbul, 1993. 同書は、トルコ共和国の外交史を研究する者にとって必携と言える。
『冷戦期とトルコ』Soguk Savas Donemi ve Turkiye - Olaylar Kronolojisi -, ISIS, Istanbul, 1997. 同書は、冷戦期が1975年のヘルシンキ宣言で終了したという点を強調している。