変貌する環境下におけるトルコの新しい役割

Dr. Deniz Ulke Aribogan Dekel
(イスタンブル大学経済学部国際関係学科講師)

トルコはオスマン帝国時代以降、国際政治においてユニークな役割を果たしてきた。しかし、オスマン帝国の崩壊後、トルコの役割は超大国としての役割から半ば周辺国へと押し遣られた。このように、20世紀になると、社会・経済的諸問題に直面しながら、新たに受け身で若く傷つきやすい国家となった。この間、トルコはNATO、OECD、CSCE(全欧安保協力会議)のような、西欧よりの団体のメンバーとなった。トルコは文明世界の一員となることを目指して来たし、今も目指しているが、経済開発の後れや文化的異質性のゆえに、ヨーロッパ世界から遠ざけられてきた。このことから、トルコは、西欧的価値観を持ったオリエント国家となっている。  ソ連邦の崩壊後、トルコ語を話し、トルコ共和国内に生活する同胞と人種的に強いつながりを持っていた中央部の国々と同様に、トルコもその重要性を再び吹き返したのである。トルコはソ連邦の解体後、その領土を500万平方キロメートル拡大したといわれているが、トルコ共和国と新興のチュルク系共和国との関係は思ったほど進展していない。この地域にはロシアの影響が未だに色濃く残っており、トルコとこれらの共和国との関係は経済および文化的領域に限定されている。トルコとこの地域との経済的関係は徐々に進展しており、トルコはこれら共和国の主要な貿易相手国となっている。1995年のトルコとアゼルバイジャンとの貿易量は1億8400万ドルとなり、カザフスタンとは2億3600万ドル、キルギスタンとは4400万ドル、トルクメニスタンとは1億6800万ドル、ウズベキスタンとは1億9900万ドルとなった。  トルコは、将来の政治・経済予測をたてるにあたって新しい展望をいくつか持っている。しかし、トルコにとってヨーロッパは今なお主要な関心地域である。ヨーロッパ諸国は未だにトルコの主要な貿易相手であり、その貿易の52%がEU諸国とのものである。EUとのシェアが、EUとの関税同盟に統合されたあと、ますます増加して行ったとしても何ら驚くべきことではない。しかし、トルコにとっては、将来別の選択肢も存在する。それは黒海経済協力機構である。この黒海経済協力機構は、黒海沿岸の諸国のみならずさらにアルバニア、ギリシア、アゼルバイジャン、アルメニアなど非沿岸の諸国をも含めている。これは、ヨーロッパおよびユーラシア地域の低開発諸国からなる経済連合を目指すものであり、トルコがこれを率先している。この10年間、トルコは経済計画や政治計画の多様化を図ろうとしてきたし、さらに独立国であることと同盟国であることとの間のバランスを維持しようと努めてきた。