海外調査報告

竹下政孝
(1班代表)




  1.出張先:オーストリア、ハンガリー
  2.日 程:1997年 7月 5日〜1997年 7月16日
  3.出張に関するテーマ:
     オーストリア・ハンガリーの研究者との研究打ち合わせ、資料調査

 今回は主にハンガリーのブタペストに滞在して、当地のアラブ・イスラーム研究者 と交流し、本プロジェクトの趣旨を説明し、協力を要請した。ブタペストではちょう ど7月7日から7月12日まで、第35回国際東方学会議(ICANAS)が開かれ ていたので、それに参加し、イスラーム部会で「イブン・アラビーの『叡知の宝石』 における普遍の理論を発表した。この論文は、イブン・アラビーの『叡知の宝石』の 第一章における普遍概念をイスラーム哲学の普遍概念とイスラーム神学の神的属性論 の両者と比較して、イブン・アラビーの理論バスラのムータジラ派(アブー・ハーシ ムの様相論)に最も近いこと、さらにイブン・アラビーの普遍理論が彼の「存在一性 論」と密接に結びついていることを明らかにしたものである。この会議の「アラブ・ イスラーム部会」における他の発表は、『東方学会報』・.73に報告記事を執筆した ので参考にしていただきたい。

 この会議は、ハンガリーのKorosi Csoma Society(日本の東方学会にあたる)とブ タペスト大学(The Eotovos Lorand University)が共同で主催したもので、ハンガ リーのほとんどのアラブ・イスラーム研究者が参加しており、彼らとの交流をはかる 最高の機会であった。筆者が会うことのできたハンガリーの主な研究者はEdmond Schutz(Hungarian Academy of Science, コーカサス学)、Robert Simon (Hungarian Academy of Science, イスラーム・アラブ学)、Miklos Maroth (Hungarian Academy of Science, イスラーム・アラブ学)、Alexander Fodor(The Eotovos Lorand University, イスラーム・アラブ学)、Tamas Ivanyi(The Eotovos Lorand University, アラブ言語学)、Vilmos Voigt(The Eotovos Lorand University, 民族学)、Mihaly Hoppal(The Eotovos Lorand University, 民族学) などである。

また会議には、普段あまり交流のない、イタリアやオーストリアやCI S諸国や東欧のアラブ・イスラーム研究者も多く参加していたので、各国のイスラー ム研究の現状についての情報交換を行った。「イスラーム地域研究」プロジェクトで は本年度、多くの外国人研究者を日本に招聘したが、国別に見て偏っていることが指 摘されているので、来年度からは、ハンガリーをはじめ、東欧諸国など従来はあまり 交流のなかった国の研究者と積極的に協力していいのではないかと考えた。また、今 回のICANASでは、「コーカサス部会」が設けられ、コーカサスのイスラームに 関する興味のある研究が、主にハンガリーとCIS諸国の研究者によってなされたの が印象に残った。イスラーム地域の中でも、コーカサス地域は日本の研究者はほとん どいないので、この分野での日本との交流が望まれる。

 ウィーンには、ブタペストの帰途に一日滞在しただけであったが、国立図書館で、 イスラーム哲学に関する文献資料を調査した。




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