Central Asian Research Series No.3


 中央アジア研究ネットワークでは、近現代史に関する重要な史料の刊行を企画していますが、このたびその第3号が刊行されましたので、お知らせします。

 これは、後にトルコの東洋学者トガンとして知られることになるアフメト・ザキ・ヴァリディ(1890−1970)が、1925年に亡命先のベルリンからタシュケントのウズベク人歴史研究者、ベクブラト・サリ・オグリに宛てた長文の書簡のロシア語訳注(9−38頁)と自筆書簡のファクシミリ(11葉)、そしてこれをウズベキスタン中央文書局で発見した歴史学研究所の研究員リナート・シガブッディノフ氏による序文(1−5頁)からなっています。

 帝政ロシア末期ウラル地方に生まれたバシュコルト人のヴァリドフは、中央アジア史を中心とする東洋学研究を志しましたが、ロシア革命の中でムスリム民族運動の指導者として活動、ソビエト政権と戦った後、国外に逃れ、最終的にはトルコに帰化してイスタンブル大学でトルコ・イスラーム史の教授となり、多くの著作を世に送った学者として知られています。今回の書簡には、亡命の民族主義者という姿とは打って変わり、自分の研究計画を詳しく語り、学問的な著作の出版の可能性を打診する、純粋な研究者としてのヴァリドフの姿が鮮明に現れています。彼の師ともいえるバルトリドら先学の誤りを正す部分もあり、ヴァリドフの旺盛な研究意欲をうかがうことができます。この書簡を受け取ったサリエフは、後にソビエト政権の抑圧を受けますが、この書簡はロシア革命期のトルコ系ムスリム知識人の歴史観を知る上でも貴重なものといえます。

 本書は、これまでと同じく、ご希望の方には差し上げますので、研究班1事務局まで郵送先を明記の上、お申し込み下さい。
ias-hiro@l.u-tokyo.ac.jp


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