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Home > 講義・演習 > 平成29(2017)年度 講義内容

平成29(2017)年度 文化資源学講義内容(共通・コース別)

▼ 各コース共通科目

特殊研究

東京大学探索―埋蔵文化財と文化資源
木下 直之 堀内 秀樹、成瀬 晃司、松田 陽 S1S2 2 水2
東京大学は、1983年に臨時遺跡調査室(現在の埋蔵文化財調査室)を開設して以来、本郷キャンパスの発掘を営々と続けてきた。東京でこれほど徹底的に掘られ続けている場所はほかにない。かつての加賀藩邸跡に東京大学がほぼそのまま存在しているがゆえに、発掘成果は近世考古学という学問領域の成立に大きく貢献した。本講義では、発掘の成果に加えて、地上に「埋蔵」されているものにも目を向け、東京大学本郷キャンパスがどのように形成され、今日の姿に至ったかをたどる。東京大学の忘れられた「文化資源」を発掘しようとする試みでもある。文化資源学研究室と埋蔵文化財調査室が組み、さらに史料編纂所、工学系研究科、大学文書館、総合研究博物館、生産技術研究所の教員が参加し、リレー形式で東京大学の姿を明らかにする。見学会もある。東京大学に入学しても、大半の学生は東京大学を知らずに卒業していく。それはいささかもったいない話だ。
博物館展示論
木下 直之 A1A2 2 木2
博物館活動の柱をなす「展示」とは何かを徹底的に問うとともに、日本社会における展示施設の存在意義についても考える。受講者には、展示の歴史的な変遷を理解する一方で、現状を適切に分析することを求める。そのことにより、博物館の現状を自明の前提とせず、将来像を描き、改善に取り組む能力を身につけてほしい。美術館、戦争博物館、動物園の展示を分析する。
近代日本美術史―『暁斎画談』を読む
木下 直之 S1S2 2 水4
『暁斎画談』(1887)とは、伝記(外編)と画論・技法論(内編)から成る河鍋暁斎(1831-1889)の生前に刊行された第一級の史料である。編者は瓜生政和(梅亭鵞叟と号した戯作者)。主に伝記部分を読み解きながら、暁斎とその時代を振り返る。併せて、近代日本美術史を(河鍋暁斎を傍流においたということをも含めて)再考し、概観することを試みたい。開講時に閉幕してしまう展覧会「これぞ暁斎!」(2.23?4.16、Bunkamuraザ・ミュージアム)を見ておくこと。本講義は2018年度S1・2に継続する。
近代日本美術史―『高橋由一油画史料』を読む
木下 直之 A1A2 2 水4
『高橋由一油画史料』(全5冊、東京藝術大学蔵)とは、「鮭図」(同大学蔵、重要文化財)で知られる画家高橋由一(1828?1894)の足跡を示すスクラップブックである。やはり画家となった長男源吉の歿後、遺族から東京美術学校に納められた。それは、高橋由一の行動録であるとともに、発言録、あるいは提言集の性格を有する。高橋は単なる画家にとどまらない。油絵の普及を通して、新たな美術の構築(たとえば美術学校の開設や美術館の建設)を社会に向かって積極的に説いた。その提案の大半は実らなかったが、本史料集を読み解くことで、幕末明治前期の日本美術を取り巻く諸問題が明らかとなる。この授業では、近代日本美術史を(高橋由一から語り始めるということをも含めて)再考し、概観することを試みたい。本講義は2018年度A1・2に継続する。
上古中国の言葉と文字
大西 克也 S1S2 2 金3
私たちは言葉を使って世界を概念化し、認識し、他者に伝える。古代の言葉の研究とは、言語による世界認識という人間の本質的な営みを、古代の人々がどのように行っていたのかを復元することである。2000年前の中国人は、男も子どもを「生」むことができた。ふつう指示詞とされる「其」や「之」には指し示す機能は備わっていなかった。「食」はなぜ「食べる」であり「食べもの」でもあるのか。「傷」はなぜそのままの形で「傷つく」も「傷つける」も表せるのか。私たちから見てちょっと不思議な表現が種々存在し、そこに古代の中国語の特質を理解する鍵が隠されている。そして古代中国語は、動詞も名詞も、助詞も前置詞も、すべての語のスケールと形態に区別がないという不思議な言語でもあった。本講義では、古代の中国人は彼らの目に映る世界をどのように言語化していたのか、また文字化していたのかを考える。今年度は動詞や述語的表現を中心に取り上げる予定である
考古学と現代社会:縄文と古代の物語
イローナ・バウシュ S1S2 2 金3
物質文化は人々の行動や価値観に影響を与え、アイデンティティーのよりどころとなる。考古学は、物質文化の地理的・時代的背景を探り、遺跡を相互に比較しつつ過去の世界を復元しようとする。しかし、過去の物質文化に関わる人々は考古学者だけではない。例えば、一般大衆, 地方・中央の政治家、公務員、マスメディア、芸術家、事業家などさまざまな人々が過去の遺産に関わりを持ち、それぞれの立場から実に多様な意味や解釈を与えている。また、 時代が変われば、異なる意味付けがなされてきた。こうした過去の文化への多様な眼差しは、日常生活にどんな形で表れているだろうか。本講義葉は、縄文時代から奈良時代にかけて日本各地の事例を取り上げ、そこに向けられた「考古学的」知識や関心を紹介し、人々の多様な興味や解釈を紹介する。その上で、考古学的文化遺産に対する価値付けやアピールの特徴を具体例に即して考察する。本講義は日本語で行い、見学旅行も実施する予定である。
文化資源デジタルアーカイブ特論
永崎 研宣 A2 2 集中
「デジタル・アーカイブ」は、誰に、何をもたらそうとしているのか。近年、博物館・美術館・図書館・文書館等、文化資源に関わる組織がデジタル・アーカイブに本格的に取り組むようになってきており、様々な議論と実践が広く展開されつつある。そこには様々な関係者がそれぞれの目的をもって参画しており、デジタル技術の変化・進歩のはやさともあいまって、全体像をつかむのは容易ではない。しかし一方、文化資源の取り扱いにおいて、デジタル・アーカイブの持つ一定の有用性はすでに疑いようのない段階に達しており、これを何らかの仕方で自らの文化資源学理解の中に位置づけることは、もはや避けて通ることが難しい状況になっているように思われる。 この授業では、そのような状況を俯瞰しつつ、受講生各自が実際のデジタル・アーカイブの活用を通じてそれぞれの関心に応じた実践的な理解の仕方を探り、そこから文化資源の基盤の一つとしてのデジタル・アーカイブのあり様を見いだしていけるようになることを目指す。実習においては、IIIFとOmekaを事例として扱うが、ここではあくまでも、文化資源の扱いという観点から必要な事項を採り上げていく。
美術館の諸問題
飯塚 隆 A2 2 火4・5
ローマにあるカピトリーノ美術館、およびヴァチカン美術館の初期の形成過程について考察します。カピトリーノ美術館は18世紀以降に創設されたヨーロッパ各地の代表的美術館の原型とみなされていますが、その蒐集と方法、さらに展示プログラム・構成の内容はどのようなものだったのでしょうか。また、この美術館の最古のコレクションは、ヴァチカンの「彫刻の中庭」の形成に影響をおよぼしました。「彫刻の中庭」は、古代彫刻コレクションが展示されたヴァチカン美術館の原点となる場所ですが、この中庭の展示プログラムに対しても注目します。さらに考古学・美術史的観点から、古代彫刻の個々の作品の価値基準が、当時と現在でどのように異なるのかにつても、検討を試みます。
日本中世美術史の諸問題(1)
高岸 輝 S1S2 2 火4
日本中世を対象に、これまでの美術史学は何を議論し、どのような歴史像を構築してきたのかを考える。
日本中世美術史の諸問題(2)
高岸 輝 A1A2 2 火4
日本中世を対象に、これまでの美術史学は何を議論し、どのような歴史像を構築してきたのかを考える。
字体の変遷(篆書・隷書・草書)
横田 恭三 A1A2 2 月2
中国において発生した漢字は、長い年月の経過とともにその姿を変えてきた。とりわけ篆書から隷書への変遷は画期的であり、この変化の過程を「隷変」と呼んでいる。しかし、隷変にはもう一つ「草書」の発生という副産物があった。篆書が隷書に変化する際には、草隷と呼ばれる草卒な隷書が書かれ、隷書の定型化を推し進めたが、一方で草書も成立した。このような字体の変遷について、昨今の出土資料を用いながら詳しく解説する。またそれぞれの書体を実際に運筆する機会を持つ。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
木下 直之、中村 雄祐、小林 真理、松田 陽、イローナ・バウシュ 通年 2 隔木3
フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学研究専攻に入学した1年目の学生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。公開で行われることが条件で、規模とスタイルは問わない。終了後は報告書をまとめる。
文化資源学の原点
木下 直之、中村 雄祐、小林 真理、松田 陽、イローナ・バウシュほか 通年 4 隔木4・5
文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文の予備審査も随時この場で行う。
「日本美術の19世紀」再考1―見世物研究
木下 直之 S1S2 2 隔金4・5
「日本美術の19世紀」(兵庫県立近代美術館、1990)は私が36歳の時に企画した展覧会で、研究者としての出発点となった。最初の著書『美術という見世物』(平凡社、1993)はこの展覧会がもとになっている。研究の原点に立ち返り、定年退職までに残された2年をかけて、新たな「日本美術の19世紀」像を明らかにしたい。同展は、1「同時代人の肖像」、2「写真と絵画」、3「日本建築の中の油絵」、4「見世物から展覧会へ」という4部構成だった。本講義では、これをつぎの4つのテーマに組み立て直す予定だ。1「見世物」(2017年度S)、2「開帳」(2017年度A)、3「博覧会」(2018年度S)、4「肖像」(2018年度A)。いずれかを選択して受講することもできる。見学旅行も行う。
「日本美術の19世紀」再考2―開帳研究
木下 直之 A1A2 2 隔金4・5
「日本美術の19世紀」(兵庫県立近代美術館、1990)は私が36歳の時に企画した展覧会で、研究者としての出発点となった。最初の著書『美術という見世物』(平凡社、1993)はこの展覧会がもとになっている。研究の原点に立ち返り、定年退職までに残された2年をかけて、新たな「日本美術の19世紀」像を明らかにしたい。同展は、1「同時代人の肖像」、2「写真と絵画」、3「日本建築の中の油絵」、4「見世物から展覧会へ」という4部構成だった。本講義では、これをつぎの4つのテーマに組み立て直す予定だ。1「見世物」(2017年度S)、2「開帳」(2017年度A)、3「博覧会」(2018年度S)、4「肖像」(2018年度A)。いずれかを選択して受講することもできる。見学旅行も行う。
文化政策の諸問題(1)
小林 真理 S1S2 2 月4
日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。日本における文化行政の発展の経緯と、諸外国における文化政策の実践は共通点もあれば、相違点もある。よりよき実践のために、どのような方法があるのかを模索する。
文化政策の諸問題(2)
小林 真理 A1A2 2 月4
日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。日本における文化行政の発展の経緯と、諸外国における文化政策の実践は共通点もあれば、相違点もある。よりよき実践のために、どのような方法があるのかを模索する。なお、この演習は、S1タームの「文化政策の諸問題(1)」を履修していることが望ましい。
論文の書きかた/文化資源学篇
佐藤 健二 通年 4 水5
社会学・文化研究・文化資源学の論文の構成のしかた、資料やデータの活かし方を学ぶ。基本的には各自の問題や研究領域を尊重しつつ、論文の書き方を検討したい。担当者の専門のひとつは、社会研究の方法史であるので、方法論的な視点から参加者の発表・報告を論じ合う予定である。
文化資源の読み書き
中村 雄祐 S1S2 2 水3
研究活動においては読み書きが中心的役割を占めるが,研究対象をやや幅広に捉える文化資源学的アプローチにおいては,研究課題をいかに設定し,何を調査対象とするか,つまり,そもそも何を読み書きの対象とするのか,という問いが極めて重要である.いかに調べ,いかに考え,いかに伝えるか.このゼミでは,これらの問いをワークショップ形式で一緒に考えていく.
過去の復元をめぐる諸問題(1)
松田 陽 S1S2 2 金2
我々はなぜ過去を復元しようとするのだろうか。歴史学や考古学は、過去を理解しようと試みる。その理解は可能なかぎり正確で客観的でなければならず、そのために様々な方法論が模索・構築されてきた。しかし復元という行為は、頭の中での理解を超えて、今ここに過去を再現しようとするものである。そうして再現された過去が、もはや過去ではないということをわかっていながら。ある意味で不自然とも言える人間の復元願望は、果たしてどこから来るのだろうか。 本演習では、過去の復元という営みについて、さまざまな事例を通して多角的に考える。浮かび上がらせたいのは、人間と過去との関係。事例は演習参加者の関心に応じて設定する。担当教員は史跡の復元について主に語るが、どんな復元について語ってもらっても結構。地域や時代も問わない。根本的な問いをつきつけるような突飛な例も歓迎。検討予定のテーマは、過去の知覚と認知(どのような場所・モノ・行為に過去を感じる?それはなぜ?)、過去の可視化、復元の規範、オーセンティシティ、コピー、レプリカ、写し、シミュラクラなど(授業の進行具合に応じて調整する可能性がある)
過去の復元をめぐる諸問題(2)
松田 陽 A1A2 2 金2
我々はなぜ過去を復元しようとするのだろうか。歴史学や考古学は、過去を理解しようと試みる。その理解は可能なかぎり正確で客観的でなければならず、そのために様々な方法論が模索・構築されてきた。しかし復元という行為は、頭の中での理解を超えて、今ここに過去を再現しようとするものである。そうして再現された過去が、もはや過去ではないということをわかっていながら。ある意味で不自然とも言える人間の復元願望は、果たしてどこから来るのだろうか。
文化資源としての東京:新宿篇(1)
渡辺 裕 S1S2 2 木2
これまで「文化資源としての東京」というタイトルで、銀座、浅草などを対象として考察してきた。本年度はその新宿篇である。今期はとりわけ、フォークゲリラやアングラ演劇が大きなうねりを形作り、「フーテン」と呼ばれた日本風ヒッピーが歌舞伎町から「サイケ」文化を発信した、1960年代後半から70年代にかけての「熱かった」時代の新宿に焦点をあて、そこでの文化が誰に担われ、どのようなプロセスで形成・変容されていったのか、様々なメディアがそこにどのように関わっていたのか、それが新宿の町並みにどのような形で反映されていったのか、そして70年代後半から現在までの間に、その何が引き継がれ、また消えていったのかといったことを考えていきたい。
文化資源としての東京:新宿篇(2)
渡辺 裕 A1A2 2 木2
S1S2学期からの継続であり、いわばその「展開形」である(履修は一方だけでも差し支えない)。前期では1960年代末から70年代にかけての「燃える新宿」の時代を中心に考察したが、さらに具体的な形でトピックをしぼり、もう少し時間的なスパンを長くとって見直してみるならば、さらにいろいろなテーマの考察が可能であり、様々な視界がひらけてくる。この時代の新宿で一世を風靡した「ピットイン」、「DIG」などのジャズ喫茶の状況は、戦前の「ムーランルージュ」にはじまり、50年代から60年代にかけて歌舞伎町で隆盛をみた歌声喫茶や名曲喫茶、さらに後の時代のカラオケ店やライブハウスなど、新宿の音楽文化の系譜の中に置いて考えてみることで、またべつの広がりがみえてくるだろう。また、中村屋、紀伊國屋書店などの、新宿の文化を担ってきた「老舗」や、戦後のヤミ市の名残を今に伝える路地など、今の新宿の町並みそのものを「文化資源」として読み解いてゆく手がかりも数多い。その他、参加者の関心にあわせてできるだけ自由にすすめてゆくこととしたい。
Japanese collections in European museums: ethnographic and archaeological materials
イローナ・バウシュ S1S2 2 月4
This course examines collections of Japanese ethnographic and archaeological items in Europe from the first interaction in the Edo period until today. After outlining the role of museums through time, as well as the motivations of private collectors, the course will focus on the history and aims of European collecting practices and related scholarship on Japan and Japanese culture. For example, the earliest acquisition of Japanese collections, by the personnel of the Dutch trading post Dejima in Nagasaki (such as the physician von Siebold) between 1815 and 1830, whose unique trade relation with Sakoku Japan provided excellent opportunities for collecting Japanese material culture, will be examined. For the modern context, case studies from European museums will investigate the ways in which archaeological and ethnographic collections are presented to the public in exhibitions nowadays. Have exhibition content, value systems and ethics changed through time? How do modern museums aim to create exciting exhibitions and attract new visitors? The course will be conducted in English.
アーカイブズ学
渡辺 浩一 通年 2 集中
特別演習:美術館における教育研究
寺島 洋子 通年 4 集中
国立西洋美術館での活動を通して、美術館における教育の役割と意義について理解することを目標とする。国立西洋美術館のインターンシップに参加し、教育普及インターンとして同館の教育活動の実施を補助する。

▼ 文化資源学コース

特殊研究

東寺百合文書―史料の生成・伝達・管理
高橋 敏子 S1S2 2 金3
アーカイブズ(記録史料・保存記録)、つまり私たちの行為・記憶・文化などであらゆる媒体に記録されたものを、どのように取捨選択し、整理されたものとして後世に伝えていくのかという課題は、誰もが簡単に記録を作成し残せるようになった現代では、身近な課題であり、今日的な観点からの分析が必要であると思う。では、歴史時代におけるアーカイブズの形成は、どのように行われたのだろうか。この授業では、こうした課題を「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」という、京都東寺に伝えられてきた古文書を対象とし、日本の中世という時代の中で考えてみることにしたい。 「東寺百合文書」は、2015年10月にユネスコの「世界の記憶:Memory of the World」に登録された、約2万5000通にのぼる一大文書群である。寺院に伝えられた文書とはどのようなものなのか、意外にバラエティに富んだ内容を具体的に見ながら、文書の生成・伝達・保管・廃棄というアーカイブズ形成の過程を検証しようと思う。史料編纂所所蔵の文書原本も閲覧する予定である。
江戸を読む
長島 弘明 A1A2 2 水4
江戸時代に歌人や国学者によって書かれた近世和文に詳注を付けつつ読む。近世和文には、叙景文、身辺雑記、紀行文、論説的文章、また短編物語めいたものまで、様々な種類がある。和文の名手とされる綾足、秋成、千蔭らの作品を扱い、和文の表現の技法について詳しく考察したい。テキストは、著者の自筆本や版本のコピーを使用する。
漢籍入門
大木 康 S2 2 集中
中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。 漢籍目録の原理、並びにその編纂の方法を教える。6月5日(月)から9日(金)までの集中講義(場所は東洋文化研究所3階大会議室)。 講義ならびに実習。図書館の見学を含む。
モノを見る、モノから考える―日本中世の史 料を素材として―
林 譲 A1A2 2 金3
史料をモノとして認識し解析することとはどのような営為であろうか。理解するためにはどのような方法があるだろうか。本授業では、それらの有力な回答・方法の一つである花押や筆跡、また料紙の紙質などの形態論的研究について研究を進め、上記に示した課題の可能性を探ることとする。特に、中世史料を十全に理解し、総合的な判断力を習得するため、講義のみならず、実際の現場に臨むことが必要であると考え、史料編纂所において日常的に行われている調査・研究・制作の場に臨み、体験する機会を設定する。史料編纂所技術部史料保存技術室においては、修補・影写・模写・写真の担当に分かれ、それぞれ教員と協業・分担して研究・業務を遂行しており、これらの成果を紹介し、実際に体験する機会を含み込んだ授業を行う。それらの結果として、中世史料を活用する上での基礎的な態度・技法を身につけること、各自の論文の作成に結びつく実践的な研究能力を養成することを目標とする。
歌舞伎 江戸から明治へ
神山 彰 A1A2 2 水2
江戸時代の18世紀中ごろから、明治期にいたる歌舞伎のイメージの変遷を見ていく。時代により、観客の欲求するものや俳優の表現したいものがどう変わるかを、直接、目や耳に訴えかけたものの変化として考えたい。時代のスターの変容や「写実」の流れを通して、隣接文化領域の関連も見ていきながら、具体的な観客の反応を考えつつ探ってみる。演劇を通して、近代に変質した目や耳の変化を知り、その時代の表現形態を具体的に考察し、様々な文化現象を考える上での能力を養うことを目的とする。

演習

Organizing and Analyzing Humanities Data with XML
A. C. ミュラー S1S2 2 月4
The is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce XML technology to humanities students as a means of enhancing their possibilities for research and publication in a systematic manner, while learning how to use non-proprietary software. We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML (eXtensible Markup Language). Students will learn the basic rules of XML syntax, soon after which they will learn how to analyze and publish documents using XSLT transformation. We will then gradually learn more sophisticated techniques using XML and XSLT, finally learning how to work through the TEI (P5) application model. This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.
Publishing XML Data with XSLT
A. C. ミュラー A1A2 2 月4
The is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce XML technology to humanities students as a means of enhancing their possibilities for research and publication in a systematic manner, while learning how to use non-proprietary software. We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML (eXtensible Markup Language). Students will learn the basic rules of XML syntax, soon after which they will learn how to analyze and publish documents using XSLT transformation. We will then gradually learn more sophisticated techniques using XML and XSLT, finally learning how to work through the TEI (P5) application model. This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.
明治期社会経済史演習
鈴木淳 通年 4 水2
明治期の史料の読解、批判とそれに基づく実証研究論文執筆法を研鑽することを目標とし、参加者の発表とそれに関する討論を基本とする。発表は、1点の基本史料の徹底的な検討に立脚する史料検討の発表と、研究論文に近いまとまった研究成果を発表する研究発表の2種類を、各参加者がそれぞれ1回以上行う。 史料検討は、国立公文書館所蔵「公文録」から任意の一件を選んで行う、発表の一週間前に基本史料を提示した発表予告を行い、参加者はその史料を読解してくることを要求される。発表は、基本史料の性格を、その作成過程を含めてよく検討した上で、必要な関連資料を提示しながら行う。なお、すでにこの演習を履修した経験がある者は国立公文書館所蔵「府県史料」から基本史料を選んでも良い。 研究発表は、発表の一週間前に、題目のみ提示し、初めて聞く参加者にも課題と発表者の発見の意味がよく伝わるように報告する。発表内容は基本的に明治・大正期の日本を対象とした研究とする。

論文指導

文化資源学コース 修士論文指導
各教員 通年 2 隔月1
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。
文化資源学コース 博士論文指導論文
各教員 通年 2 隔月1
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。

▼ 文化経営学コース

特殊研究

文化経営と文化施設運営
小林 真理 A1A2 2 月3
2012年に「劇場、音楽堂等の活性化に関する法律」が制定、施行されました。国の政策として劇場、音楽堂を運営するための枠組みが作り出され、それらの活性化のためのプログラムも動き出しています。それによって日本の劇場や音楽堂がどのように変化してきたのか、それは何にとって望ましい方向性なのかという点を検証します。その際に、これまでの劇場の歴史、海外の事例を検討対象にしながら、日本の劇場、音楽堂等の独自性を明らかにするとともに、将来のあり方について考察を深めます。
ユネスコと文化遺産(1)
松田 陽 S1S2 2 火2
今日ユネスコは、世界遺産、無形文化遺産、世界の記憶(Memory of the World)、ジオパークの登録事業を通して、世界中の文化遺産の保護に関わっている。またこれらの登録事業の他にもユネスコは、武力紛争時の文化財の保護、文化財の不法取引の禁止、紛争終了後の文化遺産修復に関連した活動に従事している。こうしたユネスコの活動は、一国際機関という枠組みを超え、各国の文化遺産保護の体制に影響を与え、さらに「文化遺産とは何か」という理論的な検討・理解を世界中に推し進めてきた。以上を念頭に置き、本授業ではユネスコが行ってきた/行っている文化遺産の保護に関する活動とその意義および影響を考える。戦後から今日に至るまでのユネスコ活動史の中で文化遺産保護がどのように位置づけられ、どう発展してきたのかを整理し、それを踏まえてユネスコの将来の展望を考査する。授業では国際条約やその運用指針の文言を確認しながら、ユネスコと世界の文化遺産政策との関わりについて具体的に考察する。
国際文化関係論
川村 陶子 S1S2 2 月3
この授業では、国際的な見地からみた文化政策の諸相を、国際文化関係とその運営(マネジメント)という枠で考察する。 国際文化関係の運営は、①異文化間関係としての国際関係の運営、②文化的資源による国際関係の運営、という二つの側面をもつ。国際関係の文脈では、帝国主義時代以降における国の対外的文化教育政策が注目されてきたが、実際にはより多様な主体が、幅広い内容の政策ないし活動の形で取り組んでいる。 授業では、文化外交、文化政策、多文化共生政策、インバウンド振興、教育の国際化等のさまざまな政策ないし活動を、国際文化関係の運営というひとつの枠でとらえ、総合的に検討する。こうした作業を通じて、文化政策や国際関係にまつわる既存の概念や思考枠組みを、新しい視点で見直すことをねらいたい。

演習

文書とその社会的役割
中村 雄祐 A1A2 2 水3
人文社会系の学問は文書を丁寧に読み解くことに注力してきたが、そこで大事にしてきたのは文書を作り伝えてきた人々の声に耳を澄まし、その心に思いをはせることであった。そして、従来、このような文系の学問の営みを支えてきたのは古い歴史を持つ紙の文書群、それらを取り巻く慣習や制度からなる巨大で複雑な文化資源であった。それに対して、周知のごとく、近年のデジタル技術は私たちの生活を大きく変えつつある(これについては、若い世代の人々の方が私よりもはるかに経験豊富であろう)。この歴史的な大変化の中で、文系の学術的な読み書きは今後どうなっていくのであろうか。私たちは新たな技術を取り込んだ文化資源をどのように編みなおしていけばよいのだろうか。 この講義では、まずこれまで蓄積されてきた声の文化や紙の文書の読み書きに関する先行研究を学び、それらを踏まえた上で、現在展開しつつある文系の学問とデジタル技術の邂逅について考える。

論文指導

文化資源学コース 修士論文指導
各教員 通年 2 隔月1
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。
文化資源学コース 博士論文指導論文
各教員 通年 2 隔月1
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。

参考:文化資源学共通講義、原典を読む、一般講義、多分野講義

文化施設経営論
小林 真理 S1S2 2水
文化施設には美術館、劇場、博物館、コンサートホール等様々なジャンルのものがあります。これらは、また国公立によるもの、あるいは民間によるものなど、設立や運営の形態も様々です。これらの施設を取り巻く社会環境について学び、よりよい運営のために必要な知識を身につけます。なお必要に応じて見学を行う場合があります。さらに、シラバスは、授業の進行具合により変更される場合があります。
文化資源学入門(1)
松田 陽 S1S2 2月
文化遺産は素晴らしい、したがって残さねばならない――本講義では社会に流布するこの通説を一旦離れ、誰がどのような意図で文化遺産をつくり出し、そしてそのつくり出された文化遺産を誰がどう使うのかを多角的に考える。そこで採用したいのは、文化遺産を現象として捉える視点である。個別に文化遺産と呼ばれているモノやコトを理解するのではなく、なぜそれらのモノやコトが文化遺産となったのか、そしてなりえるのかを考えることによって、文化遺産という社会現象のメカニズムを明らかにしたい。検討するテーマは、文化遺産と文化財の関係、法律・行政、文化財の修復、震災遺構、陵墓、記憶と記録、古墳と民間信仰など(授業の進行具合に応じて調整する可能性がある)。
文化資源学入門(2)
小林 真理 A1A2 2水
文化政策は、使われる時代によりその意図する意味合いがかなり異なる概念です。まずはその理由や意味を十分に考えた上で、戦後日本が文化に対する施策や政策をどのように展開してきたかを知り、現在の課題を明らかにします。なお授業の進捗により授業計画は変更になることがあります。
文化資源学演習(1)
小林 真理 S1S2 2水
日本でアート・マネジメントという言葉が使われるようになったのは1990年代に入ってからのことです。現代においては、芸術団体、芸術組織、芸術施設の運営論という狭い意味から、社会や地域の潜在能力を向上することを支援するという意味にまで拡大しています。その実践が公共政策の枠組みの中で評価される必要性に迫られています。アート・マネジメントや芸術文化政策の実践をどのように評価すればいいのか。まずはアートマネジメントについて学び、なぜ評価が必要になるのかということについて学びます。その上で、具体的な地域に関わります(昨年度は東京都大田区で取り組みを行いました。なお夏は瀬戸内芸術祭を見学しました)。
文化資源学演習(2)
小林 真理 A1A2 2水
地域で行われている(あるいは行おうとしている)文化政策、まちづくりやアートプロジェクトについて、なぜ地域において、アートや文化が必要とされてきているのか、現代社会におけるアートや文化の役割について、地域の文化政策の実践という側面から考察します。S1タームの文化資源学演習(1)を履修していることが望ましい。
文化資源学のフロンティア
各教員 S1S2 2木
文化資源学の大きな目標は、人文社会系諸学らしさを生かした学際研究と社会連携の推進である。この多分野講義では、「文化資源」をキーワードとして、人文社会系諸学の専門家による講義と討論を通じて、新しい融合領域の可能性を探る。
04/06 ガイダンス中村雄祐 講義のねらい、進め方、単位認定などの説明
04/13 木下直之 文化資源学研究専攻 文化資源学専門分野
04/20 祐成保志 社会学専修課程
04/27 渡辺裕 美学芸術学専修課程(文化資源学専門分野兼任)
05/11 楯岡求美 スラブ語スラブ文学専修課程
05/18 松田陽 文化資源学研究専攻 文化経営学専門分野
05/25 野崎歓 フランス語フランス文学専修課程
06/08 大西克也 中国語中国文学専修課程(文化資源学専門分野兼任)
06/15 西村明 宗教学・宗教史学専修課程
06/22 小林真理 文化資源学研究専攻 文化経営学専門分野
06/29 高岸輝 美術史学専修課程(文化資源学専門分野兼任)
07/06 佐藤健二 社会学専修課程(文化資源学専門分野兼任)
07/13 まとめと振り返り中村雄祐
法律学
中村 美帆 A1A2 2金
文学部における法律学の入門の授業として、「文化と法」を切り口に学んでいきます。教職を目指す人をはじめ、法学部以外で/文学部だからこそ知っておいてほしい法律学の基本的な考え方の習得を目標とします。
博物館空間表現実習
遠藤 秀紀、西秋 良宏 S1S2 2 集中
博物館の展示場を創造できる人材を育てることを目的とする。ここでいう展示場の創造とは、知と美の飽くなき追究に根差した文化の広がりと継承を、個たる人間として負うことを意味する。そうした人材は、ただのプランナーでもなければ経営者でもない。それは、優れた芸術センスと知的論理構成力を備え、世界に恥じない表現力を磨くことでのみ育てられる。本実習では、受講者にその入り口とそれに続く思慮の手がかりを導入したい。夏学期土曜日集中の予定。初回ガイダンスは4月10日(月)午前10時30分から総合研究博物館3階第1演習室で開く。受講希望者は必ず初回ガイダンスに参加するように。


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