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Home > 講義・演習 > 過去のシラバス > 平成26(2014)年度 講義内容

平成26(2014)年度 文化資源学講義内容(共通・コース別)

▼ 各コース共通科目

特殊研究

東京大学の埋蔵文化財と文化資源学
木下直之、堀内秀樹(埋蔵文化財調査室)、成瀬晃司(埋蔵文化財調査室) 2単位 火4
 東京大学は、1983年に臨時遺跡調査室(現在の埋蔵文化財調査室)を開設して以来、本郷キャンパスの発掘を営々と続けてきた。東京でこれほど徹底的に掘られた場所はほかにない。かつての加賀藩上屋敷の敷地跡に、東京大学がほぼそのまま存在しているがゆえに、発掘の成果は近世考古学という学問領域の開拓に大きく貢献した。しかし、その視野は東京大学開学以前に止まる。本講義では、発掘の成果に加えて、地上(すなわち路上や建物内部)の「埋蔵文化財」にも目を向け、東京大学の「文化資源」を探ろうとする試みである。今年度は、総合図書館前の発掘と広場の再整備計画にも注目したい。文化資源学研究室と埋蔵文化財調査室が組み、さらに史料編纂所、工学部建築学科、総合研究博物館、大学史史料室の教員が参加し、リレー形式で東京大学の姿を明らかにする。発掘現場の見学会も予定している。文化財に関心がある学生は、同日5限の「文化財保護の諸問題」にも参加してほしい。
博物館展示論
木下直之 2単位 火3
 博物館における展示活動の本質を理解することを目標とする。言い換えれば、博物館における「展示」とは何かを正面から問い、展示活動を中核においた公共施設の日本社会における存在意義を理解することをねらう。そのために、受講者には、展示の歴史的な変遷を理解する一方で、現状を適切に分析することを求める。そのことにより、受講生は博物館の現状を自明の前提とせず、将来像を描き、改善に取り組む能力を身につける。
 博物館の展示活動がどのような理念にもとづき、どのような歴史的変遷を経て形成されてきたか、その大きな枠組みを把握したうえで、展示活動を支える運営面と施設面の双方に注目し、3つの博物館(神奈川県立近代美術館、広島平和記念資料館、横浜市の3つの動物園)をケーススタディとし、博物館の歴史と現状と課題を論じる。オプションで、広島の原爆関連施設の見学旅行を考えている。
漢字の歴史
大西克也 夏冬 4単位 金4
 漢字の誕生から我々が使う楷書の成立に至る変遷を概観し、漢字の性質や変化のメカニズム等を考える。豊富な新出土資料、一次資料を利用して、各時代におけるさまざまな漢字のありさまを紹介する。
考古学と現代世界:縄文と古代の物語 Archaeology and the modern world: the story of Jomon and Kodai
イローナ・バウシュ 2単位 金3

 物質文化は人々の行動や価値観に影響を与え、アイデンティティーのよりどころとなる。考古学は、物質文化の地理的・時代的背景を探り、遺跡を相互に比較しつつ過去の世界を復元しようとする。しかし、過去の物質文化に関わる人々は考古学者だけではない。例えば、一般大衆, 地方・中央の政治家、公務員、芸術家、事業家などさまざまな人々が過去の遺産に関わりを持ち、それぞれの立場から実に多様な意味や解釈を与えている。こうした過去の文化への多様な眼差しは、日常生活にどんな形で表れているだろうか。本講義は縄文時代から奈良時代にかけての事例を取り上げ、そこに向けられた「考古学的」知識や関心を紹介し、人々の多様な興味や解釈を紹介する。その上で、考古学的文化遺産に対する価値付けやアピールの特徴を具体例に即して考察する。
 本講義は日本語で行い、見学旅行も実施する予定である。
 Material culture defines people, and gives them identity. The study of archaeology tries to reconstruct past societies, through objects as found in place and time, and the comparison between different sites. The interpretation of archaeological objects and places depends on different stakeholders: for example archaeologists, regional and national politicians, the general public, artists, entrepreneurs. Have such ideas changed through time? How are they manifested in every day life? This course will introduce the "archaeological" knowledge and interest in certain topics, and then investigate how the associated cultural resources are represented and perceived through case studies of important archaeological heritage sites in Japan, ranging from Jomon to Nara period.
 This course will be taught in Japanese, and will include some excursions.

文化財保護の諸問題
木下直之 2単位 火5
 文化財とは何かを考える。現代社会にあって文化財を否定することはほとんど困難だろう。「法隆寺も平等院も焼けてしまって一向に困らぬ」(『日本文化私観』)と豪語した坂口安吾は、あれは無頼作家の発言だからと退けられ、もはや誰も文化財を面と向かって否定できない。文化財保護法の制定から63年にわたって、文化財という不可侵の聖域が築かれてきたのである。近年では、これに文化遺産という新たな仲間が加わった。文化財保護法は全部で203条から成り、法律というものがそうであるように、すべての条文が整合され、法の内部に矛盾はない。しかし、一見堅固な文化財保護体制にほころびはないのか。「聖蹟」は戦後になって明白に否定された文化財だし、近年の「文化的景観」のような新たな文化財概念の導入は、実は旧来の文化財概念の否定であるという見方もできる。同法成立のはるか以前にさかのぼって、日本国がどのような理念からどのような保護政策をとり、何を守ろうとし、そのための仕組みをどのように築いてきたのかを検証しつつ、現行の文化財保護体制への理解を深めたい。
日本演劇の歴史(1)
古井戸秀夫 2単位 金2
 日本の演劇・舞踊は、何を描こうとしているのでしょうか。それを人々はどのように受け止めてきたのでしょうか。神楽や舞楽をはじめとする古代の演劇と舞踊、能に代表される中世の演劇と舞踊、それぞれの演劇や舞踊の誕生と伝承を振り返ることで、日本演劇の持つ普遍性と、それぞれの演劇・舞踊の特殊性について考えてみることになるでしょう。
「芸術作品」をめぐるテクストとコンテクスト
渡辺 裕 2単位 月3
 芸術を考えるときわれわれは、「作品」という概念を何気なく使っている。実際、「作品」の概念は、芸術をめぐる近代的なシステムのなかで中核的な役割を果たしてきた。作者は「作品」を完成させることに全力を傾け、それらが世に出されると「作品」として展示され、出版され、売買される、そして鑑賞者は美術館やコンサート・ホールで、あるいは画集やレコードの形で提示されたそれらの「作品」を鑑賞する、etc.。芸術をめぐるシステムのなかに位置する様々な人々やそこでの様々な行為はこの「作品」という概念によってつなぎ止められてきたと言っても過言ではないかもしれない。しかしこの「作品」という概念は、様々な矛盾を孕んだ概念でもあった。今われわれは、そのような近代的な芸術観自体を根柢から問い直す局面にさしかかっている。「作品中心主義」とでも言うべき考え方に覆い隠されて見えなくなっていた芸術活動の様々な側面に光が当たりはじめているという面もあろう。しかし他方でむしろ、この「作品」という概念自体の孕んでいる矛盾や、この概念が生じさせるきしみを背景にして、様々な興味深い現象が形作られ、芸術の世界にさらに豊かな陰翳を与えてきたことにあらためて気づかされているというところもあるのではないだろうか。「作品」というテクストは、生まれ落ちた途端に「作品そのもの」をこえて、それを取り巻く様々なコンテクストとの関わりを不可避的に持ち込んでくる存在である。その多様な関わりはやがて、テクストとコンテクストがその関係を逆転させたりする局面をも孕みながら、芸術の世界だけでなく、われわれの日常を形作る現実の世界にも、豊かな広がりをもたらしてくれることになる。芸術と現実とが交叉する地点で機能している、その作用やメカニズムの一端を垣間見てみることにしたい。
聴覚文化からの日本戦後史再考:『朝日ソノラマ』と音風景の考古学
渡辺 裕 2単位 月3
 日本戦後史の転換期として最近、1968年という年がしばしばクローズアップされる。学生運動や様々な市民運動が盛り上がる一方で、明治百年に代表される「過去回帰」的な動きが際だったこの前後の時期が、人々の心性を大きく変えた時期であったことはたしかであるが、この時期は同時に、こうした政治状況やイデオロギー面での変化にとどまらない、人々の感性のあり方自体の根本的な構造変容を生じさせた時期だったのではないだろうか。もしかしたら、政治的イデオロギー的な変化も、こうした「感性文化」の構造変容の一環であったとみることすらできるのではないだろうか。この講義では、聴覚文化(Auditory Culture)という観点から、音楽も含めた、この時期の広義の音の文化のあり方に焦点を合わせてこの問題を考えてゆくが、そのための恰好の媒体となるのが、1959年に創刊され、1973年まで、刊行され続けた月刊雑誌『朝日ソノラマ』である。毎号付録のソノシートにおさめられた録音は、この時代を彩った様々な音を記録した貴重なドキュメントとなっているが、そればかりでなく、「音の出る雑誌」、「耳で聴く雑誌」などというキャッチフレーズとともに売り出されたこの雑誌は、人々がそこにおさめられた音に求めた欲望や、そこに描き出そうとした「聴覚文化」のイメージ、そしてそれらがこの時期にどのように姿を変えていったかということをも語り出している。この講義では、『朝日ソノラマ』の伝える音の世界の変容をたどることを軸に、それぞれの事象の背後にある文化状況や歴史的背景にまで分け入りつつ、1960年代から70年代にかけての音の文化や人々の感性の変容を描き出してみたい。
美術館とカタログ
陳岡めぐみ(国立西洋美術館) 2単位 木2
 美術館は作品を収集、保管、展示する場所であるとともに、作家や作品の調査研究を通じて、情報を集約させる場所でもあります。所蔵品もしくは展覧会のためのカタログはそうした情報を記録し、外部へ発信するための重要な出版物ですが、メディアの多様化を見た現在、あらためてその意義が問われてもいます。本授業では、19世紀の事例を中心に美術カタログの機能や意味を歴史的に考え直します。

演習

文化資源学フォーラムの企画と実践
木下・小林・古井戸・中村 夏冬 2単位 木3(隔週)
 フォーラムの企画から実践まですべての作業を学生が中心に行う実習であり、文化資源学修士課程1年生の必修とする。夏休みまでに企画会議を重ね、フォーラムのテーマと構成を決定し、夏休みから秋にかけて、テーマに関する理解を深めるための研究会・交渉・広報などの準備を行い、年度内に公開フォーラムを開催する。公開で行われることが条件で、規模とスタイルは問わない。終了後は報告書をまとめる。
文化資源学の原点
全教員 夏冬 4単位 木4・5(隔週)
 文化資源学研究専攻の教員・学生全員が参加し、各学生の修士論文・博士論文のテーマをもとに毎回議論する。学生がそれぞれの論文の起点(動機や関心の所在)=原点を確認し、その方向性や方法を検討するとともに、文化資源学として研究を成立させるための原点を探ることをも目的とする。博士論文予備審査も、随時、この場で行う予定。
ヨーロッパにおける日本文化: 民族学と考古学のコレクション Japanese Culture in Europe: Ethnographic and archaeological collections
イローナ・バウシュ 2単位 月4

 本講義では、ヨーロッパにおける日本コレクションについて、江戸時代から今日に至るまでの実態と変遷を検討する。各時代における博物館の果たした役割と個人収集家の背景を紹介しつつ、ヨーロッパにおける収集活動や日本の文物・日本文化研究 が目指したものとその歴史を考えていく。例えば、医師フォン・シーボルトに代表される、1815年から1830年の時期におけるオランダの出島商館員を通じた日本コレクション収集活動を取り上げる予定である。また、ヨーロッパのさまざまな博物館の事例を紹介し、民族学・考古コレクションが現代どのように展示されているのかを考える。
 講義は英語で行う。
 This course examines Japanese collections in Europe from the first interaction in the Edo period until today. After outlining the role of museums through time, as well as the motivations of private collectors, the course will focus on the history and aims of European collecting practices and related scholarship on Japan and Japanese culture.
 For example, the acquisition of Japanese collections by the personnel of the Dutch trading post Dejima in Nagasaki (such as the physician von Siebold) between 1815 and 1830 will be examined.
 For the modern context, case studies from various European museums will be presented to highlight the ways in which archaeological and ethnographic collections are presented to the public in exhibitions nowadays.
 The course will be conducted in English.

近代日本社会の性表現
木下直之 夏冬 4単位 金5
 社会は性表現をどのようにコントロールしてきたか、そして、なぜ今なおコントロールを必要とするのかを、主に明治以降の日本を対象として考えたい。開講のきっかけは2つある。1つは昨年秋に大英博物館で開催され、大成功を収めた「Shunga :sex and pleasure in Japanese art」展が日本に巡回できないのはなぜか。日本の美術館も博物館も受け入れようとしない現状はどのように形成されたのかという疑問。あと1つは、ヌード=裸婦、すなわち女性裸体表現であるという社会通念がどのように形成されたかという疑問。後者の疑問に答えるかたちで、私は男性裸体表現に光りを当てた『股間若衆』(新潮社、2012)を上梓した。また近著『銅像時代』(岩波書店、2014)でも、礼服や制服など着衣像の対極としての裸体像を問題にした。さしあたっては美術の領域の性表現を問題とするが、参加者の関心を引き出しつつ、数年をかけて対象領域を写真、映画、演劇、歌謡、文学、マンガへと広げるつもりだ。また、近代社会を考える以上、前近代へとさかのぼることも必要となる。夏休みには、信州へ道祖神を見に行く予定。検閲と表現の自由、芸術と猥褻、LGBTなどの問題に関心を有する学生の参加を待つ。
音楽と映像のマルチメディア分析(英語文献講読)
渡辺 裕 2単位 月4
 「マルチメディア」というと、いかにもデジタル文化時代の現代的現象のようにきこえるかもしれないが、そんなことはない。レコードのジャケットの図柄をみたり、ライナーノーツに書かれている解説を読んだりしながら音楽を聴く体験も、立派な「マルチメディア」的音楽体験である。むしろ、音楽体験というと、音だけを純粋に聴く体験であるかのように思ってしまう方がよほど特殊な考え方なのであり、そう考えてみると、一見単一にみえる芸術体験が、実は複数のメディアの様々な作用の関わり合いによって成り立っている、そのメカニズムを考えることは、芸術体験のあり方を考える上でのキモともいうべきことであるように思われてくる。ここでは、音楽と映像との関係を事例に、英米圏での最近の研究文献の講読を通してその一端に触れてみたい。
歴史映画と現実の歴史(英語文献講読)
渡辺 裕 2単位 月4
 文学にせよ映画にせよ、フィクション作品の形作る世界は、いかに現実の世界に酷似しているようにみえても現実とは一線を画するものだという考え方は、芸術作品をめぐる近代的な思想にあっては主流の位置を占めていた。歴史小説でも歴史映画でも、そこに開かれてくるのはあくまでも「作品内世界」であって、それが歴史的事実と齟齬しているとしても、誰も咎め立てはしなかったが、その代わり、歴史学のドキュメントにはなりえないというのがノーマルな考え方であった。しかし近年、そのような考え方は揺らいできている。ヘイドン・ホワイトの「メタヒストリー」など、歴史学研究において「歴史記述」のあり方をめぐる問題が前景化してくる中、英米圏では歴史映画の研究はめざましい進展をとげ、こうした映画は歴史学研究にとってもはや、役に立たないウソの歴史などと言って済ませられるものではなくなった。このことはまた、芸術作品で描き出される虚構的世界のあり方を、現実の世界と厳しく峻別することによって位置づけようとしてきた、近代的な芸術観をもゆさぶらずにはおかないだろう。実際、芸術研究もまた、多くの人々の歴史観がNHKの大河ドラマを通して形作られているような状況の中で、そこに描かれているのは現実世界とは似て非なる作品内世界であるというような説明で事足れりとするわけにはいかなくなってきている。ここでは、日本ではあまり紹介されていない、歴史映画をめぐる英米圏での最近の研究を講読することによって、こうした問題を考えてゆくためのステップとしたい。
人文情報学の諸相
中村雄祐、小林正人、高岸 輝 2単位 火5
 この演習では、人文社会系の諸学における人文情報学的なアプローチの展開、そこでの課題や展望を、複数の専門分野の教員によるリレー形式で考える。本年度は、美術史、言語学、文化資源学の三分野を取り上げる。
特別演習:美術館における教育研究
寺島洋子(国立西洋美術館)・陳岡めぐみ(国立西洋美術館) 夏冬 4単位 集中
 国立西洋美術館での活動を通して、美術館における教育の役割と意義について理解することを目標とする。国立西洋美術館のインターンシップに参加し、教育普及インターンとして同館の教育活動(独立行政法人国立美術館主催の指導者研修、夏期教員研修、FUN DAY、Fun with Collection等)の企画・実施を補助する。

▼ 文化経営学コース

特殊研究

文化施設経営論
小林真理 2単位 火1
 文化施設には美術館、劇場、博物館、コンサートホール等様々なジャンルのものがあります。これらは、また国公立によるもの、あるいは民間によるものなど、設立や運営の形態も様々です。これらの施設を取り巻く社会環境について学び、よりよい運営のために必要な知識を身につけます。なお必要に応じて見学を行います。
文化施設経営論(応用編)
小林真理 2単位 水5
 具体的な中小規模の市町村の公立文化施設の運営に注目し、その施設が抱える問題を明らかにしながら、よりよい運営に向けての解決方法を探り提案することを目的としている。また可能な限り、その提案を実践できるように検討する。
ミュージアムテクノロジー(1)
西野嘉章(総合研究博物館) 夏冬 4単位 火3・4
 インターメディアテクにおける博物館工学の実践。ミュージアム学芸員、文化政策担当者、(ミュージアムを対象とする)専門研究者の育成
芸術文化と著作権
福井健策 2単位 月4・5(隔週)
 本講座では、あらゆる芸術文化の関係者にとって欠くことのできない知識となった「著作権」について、基本から実例を交えて講義する。現実に事件になった作品や、「ソーシャルメディア」「電子書籍」「デジタルアーカイブ」「リミックス・二次創作」などの同時代のトピックに触れて考えることで、著作権が、文化と情報社会のゆくえを左右する刺激的なテーマであることがわかるだろう。講義後半では、芸術文化のマネジメントについて必須な「契約」の基礎知識も講義する。

演習

文化政策の諸問題
小林真理 夏冬 4単位 水4
 日本で自治体が文化行政の取り組みだしてからすでに30年の時を経た。当初自治体文化行政論で掲げられた原則である(1)市民主体の市民文化の育成、(2)基礎自治体主導の方法、(3)行政の自己革新、は達成されたのかという観点からこれまでの自治体文化行政を検証し、文化行政を実践する上での方法論を明らかにすることを目的としている。日本における文化行政の発展の経緯と、諸外国における文化政策の実践は共通点もあれば、相違点もある。よりよき実践のために、どのような方法があるのかを模索する。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

▼ 形態資料学コース

特殊研究

質的調査法の諸問題
佐藤健二 2単位 金2
 具体的な記録・資料をもとに、社会学的なデータ処理や分析のプロセスについて学ぶ実習的な講義である。基本的には参加人数にもよるが、多かった場合はいくつかのグループに分かれて、資料のデータ化の方針を立て、実際に画像データやデータベース作成ソフトなどを使いながら、データベースを作成し、分析を試みる。
近世日本の異文化交流とその資料-シーボルトを中心に-
松井洋子(史料編纂所) 2単位 金3
 19世紀の出島にオランダ商館付き医師としてやってきたフィリップ・フランツ・フォン・シーボルトの名は日本では非常に有名であるが、彼の来日、日本での活動、その日本研究やコレクションは、当時の日本の対外関係の構造の中で、どのように実現したのだろうか。膨大なコレクションや草稿類等とその研究状況にも触れつつ、彼の仕事を一人の個人の偉業としてのみ捉えるではなく、当時のヨーロッパの状況や近世日本の異文化交流の文脈の中に位置づけてみたい。
オペラ演出研究講義
山崎太郎(東京工業大学) 2単位 月2
 台本と音楽に、演技や美術など、さまざまな視覚的要素の組み合わさった総合芸術であるオペラのなかでも、近年とみに注目を浴びつつある「演出」という要素に着目し、作品(台本+音楽)と演出の関係、演出様式の歴史的変遷、演出ひいてはオペラと私たちが生きる同時代の社会との関係について考える。また、モーツァルト、ヴェルディ、ワーグナーら主要オペラ作曲家の作品を取り上げ、DVD等によって具体的に複数の演出を比較・分析することで、作品への理解を深め、オペラの新たな観方を提示する。さらに、ドラマトゥルグ(プロダクションの学術的アドヴァイザー)として活動する講師自身の経験に基づき、コンセプト立案から稽古の現場に至るまで、オペラの演出が出来上がるまでの過程を具体的に解説する。
テレビコマーシャルの文化資源学
高野光平(茨城大学) 2単位 火4
  (1)日本のテレビコマーシャルの歴史について、特にその初期に焦点をあてて詳しく解説する。関連するものとして、初期のテレビ放送やテレビ文化についても概説する。(2)初期のテレビコマーシャルの保存・公開の状況について解説し、その問題点等について論じる。(3)放送アーカイブの意味と意義、今後のあるべき姿について、受講者とともに考える。

演習

歌舞伎を読む
古井戸秀夫 夏冬 4単位 水3
 本年度より、形態資料学と文字資料学のゼミを統合しました。 明治・大正期の歌舞伎について、考えてみたいと思います。 テキスト等は、参加する皆さんと相談して決める予定です。 なお、大学院のゼミですので、学部生は履修できません。
社会文化研究の方法論
佐藤健二 夏冬 4単位 水5
 社会学・文化研究・文化資源学の論文の構成のしかた、資料やデータの活かし方を学ぶ。基本的には各自の問題や研究領域を尊重しつつ、論文の書き方を検討したい。担当者の専門のひとつは、社会研究の方法史であるので、方法論的な視点から参加者の発表・報告を論じ合う予定である。

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 隔月1
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士課程のみ

▼ 文字資料学コース(文書学・文献学)

特殊研究

江戸を読む
長島弘明(国文学研究室) 夏冬 4単位 水4
 芭蕉の『奥の細道』を詳注を付けつつ読む。芭蕉自筆本といわれる初稿の中尾本の影印版をテキストとする。芭蕉の推敲の跡が見られる曾良本等との比較を通して、その本文の変化の様相をあきらかにしたい。
漢籍入門
大木 康(東洋文化研究所) 2単位 集中
 中国古典籍の取り扱いに関する総合的な知識を伝える。
 漢籍目録の原理、並びにその編纂の方法を教える。
中世史料の形態論的研究
林 譲(史料編纂所) 2単位 金3
 鎌倉幕府を開いた源頼朝が発給した文書を中心とする『島津家文書』、ながらく信濃守護を務めた小笠原氏に伝来した『小笠原文書』、地頭領主から戦国武将へ発展した熊谷氏の『熊谷家文書』などの武家文書を主とする中世史料の様式論的研究・機能論的研究とともに、花押や筆跡、また料紙の紙質などの形態論的研究について、写真版コピーに基づいた研究を進め、講義題目に示した課題の可能性を探ることとする。特に、本年度は、中世史料を十全に理解し、総合的な判断力を習得するため、講義のみならず、実際の現場に臨むことが必要であると考え、史料編纂所において日常的に行われている調査・研究・制作の場に臨み、体験する機会を設定する。史料編纂所技術部史料保存技術室においては、修復・影写・模写・写真の担当に分かれ、それぞれ教員と協業・分担して研究・業務を遂行しており、これらの成果を紹介し、実際に体験する機会を含み込んだ授業を行う。それらの結果として、中世史料を活用する上での基礎的な態度・技法を身につけること、各自の論文の作成に結びつく実践的な研究能力を養成することを目標とする。
作文教科書の諸相
月村辰雄 2単位 金5
 古代から現代に至る、またギリシア・ローマの古典古代から江戸・明治に至る、あらゆる分野の作文教科書を取り上げて、その理念、目的、方法などを探る。練習問題の附属する教科書の場合には、実際に教科書にならって作文練習をおこない、その効用を実地に体験する。

演習

明治期社会経済史演習
鈴木 淳(日本史学研究室) 夏冬 4単位 水2
 明治期の史料の読解、批判とそれに基づく実証研究論文執筆法を研鑽することを目標とし、参加者の発表とそれに関する討論を基本とする。発表は、1点の基本史料の徹底的な検討に立脚する史料検討の発表と、研究論文に近いまとまった研究成果を発表する研究発表の2種類を、各参加者がそれぞれ1回以上行う。
 史料検討は、大隈重信関係文書を用いる、発表の一週間前に基本史料を提示した発表予告を行い、参加者はその史料を読解してくることを要求される。発表は、基本史料の性格を、その作成過程を含めてよく検討した上で、必要な関連資料を提示しながら行う。
 研究発表は、発表の一週間前に、題目のみ提示し、初めて聞く参加者にも課題と発表者の発見の意味がよく伝わるように報告する。
 発表内容は基本的に明治・大正期の日本を対象とした研究とするが、演習の性格を踏まえたうえで、前後の時期や関連の深い他地域に関する発表を希望する場合は、相談に応じる。
歌舞伎を読む
古井戸秀夫 夏冬 4単位 水3
 本年度より、形態資料学と文字資料学のゼミを統合しました。 明治・大正期の歌舞伎について、考えてみたいと思います。 テキスト等は、参加する皆さんと相談して決める予定です。 なお、大学院のゼミですので、学部生は履修できません。
アーカイブズ学
中村雄祐・渡辺浩一(国文学研究資料館) 2単位 集中
 アーカイブズ(記録史料)とは、多様な組織体が授受・作成・保管してきた文書(ぶんしょ)のうち、その組織体の必要性または一般的な歴史的価値の観点から、永久に保存し公開すべきものをいう。または、アーカイブズを保存・公開する組織や施設(例えば文書館)をさす。そして、アーカイブズに関する科学をアーカイブズ学という。この講義では、国文学研究資料館(立川)で行われるアーカイブズ・カレッジ(史料管理学研修会)の全課程6週間を履修し、修了論文に合格することによって、アーカイブズ学を体系的に理解することを目標とする。
文書とその社会的役割
中村雄祐 2単位 月3
 研究活動においては読み書きが中心的役割を占めるが,研究対象をやや幅広に捉える文化資源学的アプローチにおいては,研究課題をいかに設定し,何を調査対象とするか,つまり,そもそも何を読み書きの対象とするのか,という問いが極めて重要である.いかに調べ,いかに考え,いかに伝えるか.このゼミでは,これらの問いをワークショップ形式で一緒に考えていく.
人文情報学(1):Analyzing,Organizing,and Publishing Humanities Research with XMl and TEI
中村雄祐・A.C.ミュラー 2単位 月5
This is the first half of a two-semester course. The aim of this course is to introduce to humanities students the techniques and approaches of text markup using XML (eXtensible Markup Language), as a way of analyzing documents and data, and as a way of organizing and publishing the results of one's own research in a systematic manner. The principal XML application that will be taught will be that of the Text Encoding Initiative (TEI; http://www.tei-c.org). We will begin by at a very basic level by reviewing the underlying HTML structure of web pages with a text editor. After students have gained a basic understanding of the concept of style markup through HTML, we will approach the tasks of web page creation and textual analysis through XML. Students will learn the basic rules of XML syntax, learning how to work through the TEI (P5) application model.
This class is open to students with both beginning-level and advanced skills.
人文情報学(2):Publishing XML Materials with XSLT
中村雄祐・A.C.ミュラー 2単位 月5
This is the second half of a two-semester course. Building on the basic knowledge of XML and TEI developed during the first semester, students will learn how to use CSS and XSLT to transform and publish XML documents. Students with programming skills might be able to take this course without having taken the first semester, but for most students, semester I will be necessary.

論文指導

修士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
修士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※修士2年のみ
博士論文指導
各教員 夏冬 2単位 月1(隔週)
博士論文のテーマ、構想、構成などについて指導する。 ※博士2年のみ

参考:文化資源学共通講義、文学部原典を読む、一般講義(学部のみ)

文化資源学入門(1)― 文化政策学入門
小林真理 2単位 水5
 文化政策は、使われる時代によりその意図する意味合いがかなり異なる概念です。まずはその理由や意味を十分に考えた上で、戦後日本が文化に対する施策や政策をどのように展開してきたかを知り、現在の課題を明らかにします。
文化資源学入門(2)― 文書文化論:文系の学問とデジタル技術門
中村雄祐 2単位 月3
 人文社会系の学問は文書を丁寧に読み解くことに注力してきたが、そこで大事にしてきたのは文書を作り伝えてきた人々の声に耳を澄まし、その心に思いをはせることであった。そして、従来、このような文系の学問の営みを支えてきたのは古い歴史を持つ紙の文書群、それらを取り巻く慣習や制度からなる巨大で複雑な文化資源であった。それに対して、周知のごとく、近年のデジタル技術は私たちの生活を大きく変えつつある(これについては、若い世代の人々の方が私よりもはるかに経験豊富であろう)。この歴史的な大変化の中で、文系の学術的な読み書きは今後どうなっていくのであろうか。私たちはデジタル技術を取り込んだ文化資源をどのように編みなおしていけばよいのだろうか。
 この講義では、まずこれまで蓄積されてきた声の文化や紙の文書の読み書きに関する先行研究を学び、それらを踏まえた上で、現在展開しつつある文系の学問とデジタル技術の邂逅について考える。
博物館空間表現実習
遠藤秀紀(総合研究博物館)、諏訪 元(総合研究博物館)、西秋良宏(総合研究博物館)、西野嘉章(総合研究博物館) 2単位 集中
 博物館の展示場を創造できる人材を育てることを目的とする。ここでいう展示場の創造とは、知と美の飽くなき追究に根差した文化の広がりと継承を、個たる人間として負うことを意味する。そうした人材は、ただのプランナーでもなければ経営者でもない。それは、優れた芸術センスと知的論理構成力を備え、世界に恥じない表現力を磨くことでのみ育てられる。本実習では、受講者にその入り口とそれに続く思慮の手がかりを導入したい。
歌舞伎の太夫狂言を読む
古井戸秀夫 2単位 金2
 近松の『俊寛』、出雲の『寺子屋』、半二の『妹背山』など、代表的な歌舞伎の義太夫狂言を読みます。
法律学入門
小林真理 2単位 火1
 文学部に入学してきた皆さんにとって法とはどのようなイメージのものでしょうか。法は裁判と結びつきやすく、罰する、罰せられる、あるいは堅いといったイメージが強いのではないでしょうか。たしかに私たちの生活は様々な側面で法から規制を受けてはいます。しかしながら、私たちの権利を守るため、あるいは私たちの権利を実現するための法もあります。私たちの生活に法は不可欠なものになっているということです。さらに、私たちは法の価値の創出に関わることもできます。ただそのことはよほどのことがない限り実感できないかもしれません。そこで、この講義では、文学部の学生なら関心を持つであろう「表現すること」あるいは「文化の創出」という側面から、法律学の特徴を見てみることにしたいと思います。


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東京大学大学院人文社会系研究科 文化資源学研究室
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