東京大学文化資源学公開講座「市民社会再生ー新しい理論構築に向けて」


シンポジウム


市民社会再生に向けて、

<文化裁判員>制度はありうるか?

長い目で見れば、裁判員制度は、おそらく、この夏の「政権交代」よりももっと大きな影響を日本社会に及ぼすことになるのではないでしょうか。立法、行政、司法のうち、「市民」にとってもっとも縁遠かった(原告や被告にならなければ傍聴するほかなかった)司法の世界が、「市民」を組み込んだ制度改革を大胆に行ったことは、特筆に値します。もちろん、新制度は動き始めたばかりであり、メディアもこぞって好意的に論じている段階であり、これからさまざまな問題が浮彫りになるに違いありませんが、「お上」の判断に「市民」が口をはさむ仕組みが生まれたことは間違いありません。

 では、文化の領域で、それはどのように可能だろうかという問いかけを、シンポジウムで行おうと思います。「文化裁判員」というまったく耳に馴染みのない言葉をあえてぶつけて、文化の領域を「お上」任せにせず、「市民」が参与する仕組みを、各プロジェクトチームがそれぞれの観点からシミュレーションしようという趣旨です。芸術文化の価値とその振興策を誰がどのような仕組みで決定=裁判するのかという問題提起です。

 ここでは「裁判」という言葉を比喩的に用います。決して、裁判制度を芸術文化の世界に持ち込むのではありません。争いごとの裁定ではなく、価値判断や評価を下すこと、しかし、それが単なる個人的な判断に終わらず、社会に生かされる仕組みを考えようとすることを、「裁判」という言葉に託したいと思います。いいかえれば、「裁判官」の世界に「裁判員」が参入することの可能性を問いたいと考えています。

 3チームのテーマは「戦後の文化行政、美術館、モダニズム建築を考える」、「<所有>からアートの公共性を考える」、「芸術文化振興施策に関する規範を考える」であり、この3種の観点から、架空の「文化裁判員制度」について「考え」ます。 

日時 2009年12月12日(土)14:00〜17:30

会場 東京大学 本郷キャンパス 法文2号館1大教室


主催 東京大学大学院 人文社会系研究科 文化資源学研究専攻

協賛 パナソニック

後援 文化資源学会、日本文化政策学会

スケジュール

14:00~14:15 3年間の総括と趣旨説明

        木下直之(東京大学人文社会系研究科教授)

14:15~15:15 話題提供「市民の司法参加が社会にもたらすもの」

        三谷太一郎(東京大学法学部名誉教授)

   <休憩:15分>

15:30~16:30 3プロジェクトチームによる報告

        「戦後の文化行政、美術館、モダニズム建築を考える」

        「<所有>からアートの公共性を考える」

        「芸術文化振興施策に関する規範を考える」

        各チーム代表者(3チーム、各20分程度)

16:30~17:30 総合討論

        司会=曽田修司(跡見学園女子大学教授)

           小林真理(東京大学人文社会系研究科准教授)


定員 150名 

申込 オンラインフォームよりお申し込みください。



講師プロフィール 三谷太一郎

1936年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科教授、成蹊大学法学部教授を歴任。専攻は日本政治外交史。著書『政治制度としての陪審制ー近代日本の司法権と政治ー』(東京大学出版会、2001年)その他。



連絡先 東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究室内

    〒113-0033  東京都文京区本郷7-3-1  tel/fax 03 (5841) 1251

        e-mail: shiminsyakaisaisei[@]gmail.com