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横澤 一彦 著
視覚科学
勁草書房, 2010年2月刊行
出版経緯
- 2007年4月に勁草書房から入門書もしくは教科書の執筆のお誘いがあり、お引き受けしたのですが、脱稿まで2年強、刊行までは3年弱かかりました。
- これまでの不勉強がたたり、関連書を買い揃え、新たに勉強し直すことも多く、結果的に自宅に大きな本棚を購入しました。
- ヒゲの起源は、本邦初公開です。
表紙
- デザイン化されていますが、抽象絵画の創始者であるカンディンスキーの作品が使われています。
- 1987年に京都近代美術館で開催されたカンディンスキー展 で見た最も好きな作品で、ずっと自分の部屋にこの作品のポスターを飾っていました。自分の脳内視覚表象と共鳴するものがあったのかもしれません。但し、本書の中でも書いているように、カンディンスキーは共感覚者だったのではないかと考えられていますが、私は共感覚者ではありません。
- UCバークレイのStephen E. Palmer教授が大著"Vision Science" を書かれていることは本書でも触れていますが、その表紙が 印象派の代表的画家であるゴッホの作品が使われていることは、本書の表紙を決めるときにかなり意識しています。なお、本書が刊行されたときに、共同研究のためにPalmer教授の元に滞在していたのは、何か因縁を感じます。
推薦のことば
- お二人の大先輩に、推薦のことばをお願いしたところ、お二人とも快くお引受頂き、いずれも過分なお言葉を頂戴しました。
- 心理学を代表して、大山正先生からご推薦頂きましたが、用語や内容についてもご指導頂き、本当に恐縮しています。実は、現在使用している大学の居室は、恐れ多くもかつて大山先生が使われていた部屋なのです。
- 工学を代表して、淀川英司先生からご推薦頂きましたが、実は私がマック・フリークであるのは、1981年に電電公社に入社し、淀川先生の研究グループに配属されたときに、淀川先生がApple IIcを駆使して視覚心理実験に取り組んでいるのに感心したことが起源です。
書評
- 齋木潤先生(京都大学) 基礎心理学研究, 29, 1, 17-18, 2010.
「......われわれ、知覚心理学者,認知心理学者はともすれば自身の原点でもある実験心理学から離れ、隣接諸分野のさまざまな先端的手法にとびつきがちであるが、本書は、そんなわれわれに自身の原点の重要性にもっと誇りを持てと訴えかけているようである。今後ますますボーダーレス化していく学術研究の中で、われわれ基礎心理学研究者の多くが学際的な環境で生きていくことになるが,その際の重要な心得を本書から得たような気がしている。その意味で、この「視覚科学」という本は、教科書として多くの大学生、大学院生にとって有用な一冊であると同時に、学術研究の大海原の中で荒波にもまれている若手、中堅の基礎心理学者たちにとっても心の支えとなりうる一冊であると思う。」 全文
- 三浦佳世先生(九州大学) 認知科学, 17, 4, 771-773, 2010.
「......古くから知られている現象に対し、21世紀の新しい見方を紹介し、視覚科学がたえず更新されている研究分野であることを伝えている。科学は真実ではなく、仮説であること、教科書に書かれていることも新たに書き換えられる可能性を持っていることを示すものであり、ここにも共感を抱く。こうした著者の姿勢は、比較的、詳細に実験方法を紹介していることからも伺える。結果のみを述べたのでは見逃すであろう問題点や別の仮説の可能性を、読者に発見できる機会を与えている。視覚科学に最初に接する初学者だけでなく、すでに視覚科学に関心をもった次の段階の学生にも、自らの研究テーマを探し出す際に役立つことだろう。......」 全文
自著を語る
- 横澤一彦(東京大学) 心理学ワールド 52号, 40頁, 2011.
「......狭義の認知心理学研究に限定せず、学際的研究を積極的に数多く取り上げることによって、認知心理学的アプローチの色褪せることのない重要性を伝えたいと思います。......」 全文
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