環境の変化に対応する視覚的注意と

行動のメカニズムに関する認知心理学的研究


特定領域研究「ITの深化の基盤を招く情報学研究」
研究項目A03 人間の情報処理の理解とその応用に関する研究


研究代表者:横澤 一彦 助教授 yokosawa@l.u-tokyo.ac.jp
東京大学 大学院人文社会系研究科 心理学研究室





研究目的

 本研究では、人間の基本的なメカニズムとIT時代がつくり出す外的環境との関係を認知心理学的に明らかにすることを目的とする。具体的には、視覚的注意とそれに関わる行動の基本的メカニズムの解明である。特に、外的環境が突然変化したときの特性を明らかにしたい。したがって、実験的な検討をするために扱う現象は、変化や反復の見落とし、課題切り替えなど、認知心理学的に最近大きく注目されている現象である。変化の見落としは、情景切り替えにおいて、切り替え前後の情景の大きな違いも見落としてしまう現象であり、ギストやレイアウトといわれる視覚的な構えと密接な関係があると考えられる。反復の見落としは、時空間的に反復されるオブジェクトがそれ以外のオブジェクトより見落とされる現象であり、我々がオブジェクトとして抽出し保持している時空間的処理単位を判断する材料になりうる。課題切り替えは、実験課題を突然変えたときの行動の混乱要因を見極めようとする研究である。このような実験パラダイムを組み合わせることによって、視覚的注意とそれに関わる行動の基本的メカニズムを明らかにする。

研究計画

 行動に対応するための視覚的注意を主たる研究テーマとして取り上げる。ここでは、視覚的注意に影響を与える要因を2つに分けて考えることにする。1つがギストであり、もう1つがレイアウトである。ギストとは、注意無しに瞬時に得られる情景の抽象的意味であり、レイアウトは情景におけるオブジェクトの空間的な配置である。いずれも、変化や反復の見落としなどの現象を利用して、抽出されるギストとレイアウトに関する情報を定量的に見極める。すなわち、いずれも視覚的には提示されているにも関わらず、被験者が目的の課題を十分に達成できない状況で、ギストやレイアウトという視覚的注意を形成するために必要と考えられる情報がどのレベルの処理まで関与しているのかを明らかにする。

Top
home